ぶっちゃK-HIPHOP

(0)プロローグ

 

WASEDA MUSIC RECORDSになぜか韓国から来たヒップホップオタクの新入生が入ってきました。今これを書いている筆者自身のことです。はじめまして。ニホンゴメッチャムズカシイデス。

せっかく大学生になったんだし、今年からはもう少し生産的なオタク生活を送ろうと思っていたところ、日本でもヒップホップが今すごくブームだと聞いて、それならこの機会に、浅い知識だけど、自分が知っている韓国ヒップホップシーンを紹介することで、もっとシーンが盛り上がらないかな?と思って……、いやぶっちゃけ別にブームになってなくても普通にオタク力発散のために、この企画(?)を考えました。

「企画」とかなんかすごいこと言ってましたが、ただただ自分が好きな韓国のラップミュージックをいろいろなカテゴリーでくくって紹介するだけです。ぶっちゃけ、自分もまだヒップホップをちゃんと聞いたのは短いですし、専門知識とかも浅いです。たぶん日本語もところどころおかしいです。客観的ではないかもしれません。しかし、自分なりに熱情をもって真剣に書いているので、ぜひたくさんの方に読んでもらって、ぼくの嗜好をみんなに強要できたらなあ(??)と思っています。

このシリーズを通じて、両国のヒップホップシーンの交流が深まれれば、という遠大な目標を夢見ています。どうか、よろしくお願いします。

 

 

(1)2018年上半期韓国ヒップホップ注目のトラック30

 

2018年ももう半分が立ちました。今年、韓国ヒップホップシーンでは、やたらと注目されるアルバムがたくさん出ました。秀作は多かったものの、多作な分クォリティー的に残念なものも多かったり(まあ、いつものことですが)、これといった傑作がほとんど出なかったのも事実です。まあ、ああだこうだ言っても、意外と富作だった半年でしょう。

それで、初めから急に韓国ヒップホップの自分なりの決算を行おうと思います。「なんとなく韓国のラップを聞きたいけど、何から聞こう?」と思う人のために(というのは理屈で、ただただ自分が一度やってみたくて)、今年出た注目の曲を30曲くらいに絞ってまとめてみました。

ここにあげて順位を付けた基準は、「完成度」と「重要度」と「波及力」を程よく考慮するように見せて、実のところは、自分勝手に順番遊びしたかっただけだという……非常に残念な基準です(笑)(いや、笑うな、俺!)。

とにかく、もうやってしまった決算、始めます!

 

⚠アーティスト名はできるだけ英語表記にしますが、名前が純粋なハングルの場合はもとの名前も記します。

⚠曲名の場合は原題を書いて、韓国語だった場合、括弧で英訳をつけることを原則とします。

⚠できるだけ公式の英訳を使おうと頑張りますが、それがない場合、筆者自身で訳します。その場合は英訳題名の前に「*」印をつけます。歌詞の場合ははほぼすべて筆者の訳なので印はつけません。

 

 

 

  1. Coa white – hai domo ai chann toe akari chann!

Produced by Coa white

 

 

Lil Pumpが踊りそうなビートの上に、なぜかキズナアイちゃんがラップをしている衝撃は、ヒップホップシーンで小さい波乱を起こしました。とあるラッパーはリプライで「科学がすべてのフィメールラッパーに勝った」とつぶやいたり。いや、確かにアイちゃんはスーパーAIだけど、ボカロじゃないんだぞ。そこがすごいんだぞ。ちなみに、筆者自身もすごく驚いて、どうやって作ったのかDMまでして聞いてみましたが、帰ってきた返事は「企業秘密です」と(汗)。

 

 

 

  1. OHIORABBIT – 적 (RED) (Feat. KHUNDIPANDA)

Produced by Coa white

フューチャーベースを基盤にしたビートの上で、juiceoveralcholクルーの二人のラッパーが「お金」について語ります。「なんで金はいつも敵みたいなんだ?」という質問をして、自分の家族のことをちらっと見せながら(「父の投資は2年で3億(ウォン)を作ったさ/今のラインでswagを感じたお前らは永遠に僕の敵みたいさ」)、むやみなswagを批判するOHIORABBITの歌詞は特に素晴らしいです。スーパールーキーのKHUNDI PANDAの短いverseも核心を貫きます。韓国語がわからない方には難しいかもしれませんが、二人とも素晴らしいラッピングの所有者なので、ラップを聴く味も十分です。

 

 

  1. 한국사람(*KOREAN) – 거위의모험(*The Adventure of the Goose)

Produced by jayhmez

 

「韓国人」というラッパーネームからただものではないことが感じられるこの人の音楽を聴くと、アマチュアが低価格のマイクで録音したみたいな曲が流れます。ラップもすごく素人ぽくて、むしろ奇怪です。しかし、その曲の中にこもった負け犬の感情を、何のフィルターもなくそのまま伝えます。1節では、平凡に生きたいという夢を語って、2節では何もできない現実を語る、一見単純な構造でできているこの曲は、聴いていると泣ける何かが伝わります。ひねくれた否定的感情だけを極限にあげて、補正もなく歌うことで、常に競争を求められる韓国の青春の実像を生で見せたかったのでしょうか。ミックステープ『엠창인생(Rape Life / *糞人生)』の最大名曲。ミュージックビデオと一緒に見ることをお勧めします。

 

 

 

  1. Coogie – 스즈란(SUZURAN) (Feat. Kid Milli, nafla, LOCO)

Produced by Dakshood

https://itunes.apple.com/jp/album/suzuran-feat-kid-milli-nafla-loco/1386625489?i=1386625496

 

ベテランラッパーBill Staxの支援でどんどん知られている新人ラッパーCoogieのセルフタイトルEP《Coogie》に収録された一番の人気曲。フィーチャーリングメンバーもみなラップスキル満載のヤングなラッパーたちで、ラップを聴く面白さは満タンです。Coogieはこのアルバムでヒップホップリスナーに実力を認められるようになりました。普段はポップナンバーで知られているLOCOの活躍も見どころ。

 

 

 

 

  1. Sway D – Color Gang (Feat. Young Thugs Club, Woodie Gochild)

Produced by Sway D

https://itunes.apple.com/jp/album/color-gang-feat-young-thugs-club-woodie-gochild/1380650478?i=1380650482

 

HI-LITE RECORDSのラッパー及びプロデューサーのSway Dがついに出したデビューEPは、さわやかで楽しいサウンドのトラップナンバーが印象的でした。特に、「白黒でつまらない世界を僕らが色づけるぞ!」という単純なコンセプトの下で歌われるverseはみんなそこそこうまいシンイングラップと、どこか抜けたような歌詞がすばらしく調和します。YouTubeのミュージックビデオは、なぜか日本語の字幕も支援しますので、気になる方は是非一度どうぞ。ミュージックビデオと一緒に聴くとすごく面白いです。

 

 

 

 

  1. Uneducated Kid – Amazing (Feat. Jvcki Wai, Paul Blanco)

 Produced by Ian Purp

 

まぬけで危なっかしい歌詞と、それとは真逆な雰囲気のさわやかすぎるシンイングで急浮上している新人ラッパー、Uneducated Kidの話題曲。新鋭Jvcki WaiとPaul Blancoが参加したことと、「僕は粉を売って、名前変える〈薬局〉」というサビを楽しく歌っているカルト性、そしてそのカルト性をグンと高める「指名手配」アルバムアートは、この曲を話題にさせるのに十分だったと思います。

 

 

24. Basick – SM58 (Feat. JUSTHIS)

Produced by Panda Gomm

https://itunes.apple.com/jp/album/sm58-feat-justhis/1332959173?i=1332959174

Basickの多事多難なキャリアは、意外と今年、やっと光っているのかもしれません。期待されるルーキーから、期待以下のアルバムキャリアと、ラップオーディション番組《Show Me The Money 4》で優勝したが、その後のいい成果が出なかった彼にとって、夢の始まりであり、唯一の武器であった、マイクロフォンを素材にして出した、アルバム《Foundation vol. 4》のリードシングル〈SM58〉は、いつの間にかベテランになったBasickと、ヒップホップシーンを恐ろしいキャリアで支配していく新鋭JUSTHISのコラボだけでも話題になった曲です。復古的なラップの野望を感じたいリスナーにお勧め。

 

 

 

  1. VINXEN – 그대들은어떤기분이신가요(How Do You Feel) (Feat. 우원재(Woo Won Jae))

Produced by Punch Sound

https://itunes.apple.com/jp/album/how-do-you-feel-feat-woo-won-jae/1395844683?i=1395845375

TV番組『高校ラッパー』シーズン2のスター、VINXENが放送で発表し、フィーチャーリングをつけて正式に発売したシングルです。(以後、彼のデビューEPにも収録されます。)学校の外にいて、世間から「問題児」と呼ばれる高校生の憂鬱な心をうつして、大人の世界に問いをぶつける正直な歌詞が印象的です。発表されたとき、大衆の間ですごく話題になった曲です。

 

 

 

  1. E SENS – Real Thing (Demo)

 Unknown Producer

 

いまやもうレジェンドで、「リアル」なラッパーの標本であるE SENSの公開曲です。彼にとっては珍しく慰めのある曲です。韓国ヒップホップを代表するMCの曲であって、どんなバイブの曲でも彼の色が濃く染みていますので、関心のある方は是非一度聞いてみてください。

 

 

21. Dakshood – Money Man (Feat. Ja Mezz, Hash Swan, Bill Stax)

 Produced by Dakshood

https://itunes.apple.com/jp/album/money-man-feat-ja-mezz-hash-swan-bill-stax/1335536241?i=1335536249 

 

プロデューサーDakshoodは古典的なサンプリング技法でトレンディーなトラップナンバーまでも作ってしまう、非常に優れたプロデューサーです。そんな彼の堅固なプロダクションに、よく協業しあうラッパーJa Mezzの中毒的なサビ、Hash Swanの独特なトーンと自由に流れるフロー、ベテランラッパーBill Stax(旧VASCO)のトラップフローなどが合わさって、素晴らしい完成度のMoney Swagを作り上げました。

 

 

  1. Han Yo Han – 범퍼카(Bumper Car) (Feat. NO:EL, Young B)

Produced by Han Yo Han

https://itunes.apple.com/jp/album/bumper-car-feat-noel-young-b/1341593798?i=1341594041 

ギターリストが急にラップをしだして注目されたハン・ヨハン。ハイテンションなロックサウンドとハン・ヨハンのすがすがしいシャウトなど、ヒップホップとロックを音楽的センスで程よく融合させているアーティストです。軽く、楽しく聞ける歌で、ハリウッドのB級ヒーローものに似合いそうです。ただ、サビで「カミカゼ」という戦争犯罪の用語をむやみに使ったことで相当の批判も受けています。

 

 

  1. Jay Park – SOJU (Feat. 2 Chainz)

Produced by WOOGIE

https://itunes.apple.com/jp/album/soju-feat-2-chainz/1389713521?i=1389715730 

2017年のヒップホップ界のビッグニュースの一つは、アイドル出身で、今やすっかりヒップホップ・R&Bの公式働き者、パク・ジェボム(Jay Park)が、Jay-Zが頭にいるROC NATIONレーベルとアーティスト契約をしたことでした。Jay Parkの実質的な海外活動を知らせる嚆矢的な曲です。「焼酎」の主題で、アメリカの有名ラッパー2 Chainzとラップしあうことも面白いです。自分的には完成度がそんなにいいとは思いませんが、今まで出たアルバムのクォリティーがすごかったので、7月にROC NATIONから出るEP、期待しています。

 

 

  1. Cosmic Boy – 동서남북(EWSN) (Feat. Choilb, OLNL, Kid Milli, Giriboy, Han Yo Han)

Produced by Cosmic Boy

https://itunes.apple.com/jp/album/ewsn-feat-choilb-olnl-kid-milli-giriboy-han-yo-han/1374802685?i=1374803086 

 (Live映像)

Giriboyが発足した『WYBH』クルー所属のプロデューサーCosmic Boyは、同じくWYBH所属のGiriboyやOLNL、Kid Milliなどの曲をプロデュースすることで、静かに浮上しているフューチャーベース基盤のヒップホッププロデューサーです。彼がついにソロのプロデュースEPを出して、その中でも、WYBHの名の知れたプレイヤーたちが多量参加したこの曲はリスナーたちの間で話題になりました。

 

 

 

  1. 이수호(Lee Soo Ho) – Ambush (Feat. Kim Ximya)

 Produced by 이수호(Lee Soo Ho)

 

https://itunes.apple.com/jp/album/ambush-feat-%EA%B9%80%EC%8B%AC%EC%95%BC/1406241827?i=1406241843 (アルバム収録)

何の情報も知られていない、本当に何の前触れもなく突然出てきたプロデューサーのリ・スホ。サウンドクラウドに唯一に上がってるこの曲は、アバンギャルドヒップホップグループ《XXX》のスーパールーキーラッパー、Kim Ximyaのフィーチャーリングで知られ、その前衛的なビートで話題になりました。Kid Milliの〈AI〉と〈WHY DO FUCKBOIS HANG OUT ON THE NET〉をプロデュースしたということしか知られていない、いまだにヴェールの中に包まれているこのプロデューサーは、この一曲だけで十分に注目されるべきだと思います。ちなみに、7月3日に彼のデビューアルバムが発売されました。要チェック。

 

 

 

  1. Indigo Music – Hyperreal

 Produced by Xindoel

https://itunes.apple.com/jp/album/hyperreal/1338676454?i=1338676725 

Indigo MusicのJvcki WaiとKid Milli、Swingsが参加したレーベル団体曲は、女性ラッパーJvcki Waiの入団曲のようなものです。サウンドクラウドを中心に浮上していた新鋭のJvcki Waiが、本格的にメジャーレーベルで働き始めることを知らせる予告編を見ているようです。

 

 

 

  1. Kid Milli – daddy

Produced by NK Music

https://itunes.apple.com/jp/album/daddy/1382602093?i=1382602095 

Indigo Musicに入って一年足りずでトレンドセッターになった新鋭Kid Milliが、正式フルアルバムが出て2か月もたたないうちに発表したEP《IMNOTSPECIAL》の収録曲です。衝撃的な家の事情を、父に話しかける形式で淡々と語った曲は、クールでオタクというキャラクターしか知らないリスナーたちにショックを与えました。実話基盤のストーリーテーリング曲の中で今年一番インパクトのあった曲だと思います。

 

14. Balming Tiger – I’m Sick

Produced by No Identity

https://itunes.apple.com/jp/album/im-sick/1403697724?i=1403698243 

 

Keith Apeのヒット曲〈It G Ma〉をギターでカバーした映像で話題になったラップ・ボーカルのByung Unをフロントマンとして集まったクルー、Balming Tigerの話題曲の初シングル。インターネット放送のお約束のふざけをパロディしながら死に物狂いで有名になりたい気持ちを表す、面白くて同時に衝撃的なビデオは、本当に彼らの名をどんどん広く知らせています。リストの中で一番面白いミュージックビデオなので、ぜひチェックを。

 

 

  1. Simon Dominic – 정진철(Jung Jin Chul)

Produced by Dihcro

https://itunes.apple.com/jp/album/jung-jin-chul/1399496248?i=1399496900 

Simon Dominicは大衆的に有名なラッパーですが、長い間ソロアルバムがないとのことで、批判を超えて、もはや一つの笑いネタとして遊ばされました。そんな中、突然出たこのアルバムには、今までのポップ性を見せたスタイルとは真逆の、暗い自伝的ストーリーが詰まったEPでした。特に、失踪した叔父のことを題材にしたこの曲は発表直後すごい反響を呼びました。個人的に彼独特の華麗なフローが全くないことが残念ですが、その影響自体で上半期の注目すべきトラックとして載せました。ちなみにこの後、叔父に実際再開したともいうので、めでたしめでたし。

 

 

  1. TakeOne – 개화(Bloom)

Produced by Pleyn, Dakshood

(未発売曲で、MIC SWG BOOTHというコンテンツで行ったライブヴァージョンで初公開された。)

https://itunes.apple.com/jp/album/bloom/1410677913?i=1410678105 (7/11正式リリーズ)

TakeOneの2016年末日に(本名キム・テギュン名義で出した)アルバム《녹색이념(Green Ideology)》は、韓国ヒップホップシーンに久々の密度の高い叙事のある自伝的なアルバムが出たことで好評を受けました。そして今年、プロデューサーNUOLが企画・進行したコンテンツ《MIC SWG BOOTH》で発表した未公開曲は、暖かいサウンドと歌詞が印象的で、次のアルバムを期待させました。『開花』という曲名は、駅の名前でもあって、「花を咲かす」というそのままの意味も持った二重の仕掛けです。「一人の女性について話したい。顔だけでなく心が一番きれいな、あなたのような女をまた会えるのなら、僕ももう一度息子として生まれたい」というverse始まりのラインは、反転もあるし、何より美しくないですか。歌詞がわからなくても、音楽自体が美しいですので、積極お勧めします。(ちなみに、映像では2曲を歌いますが、一曲目がこの曲で、二曲目は《녹색이념(Green Ideology)》の収録曲〈제자리(*Right Place)〉です。この曲も家族に捧げる曲で、アルバムのエピローグ部分を担当する、美しい曲です。)

⊛正式リリーズは7月ですが、未公開時の反応が強かったため、上半期の曲として紹介します。

 

 

  1. XXX – 뭐어쩔까그럼(What You Want)

Produced by FRNK

https://itunes.apple.com/jp/album/what-you-want/1344722811?i=1344723109

ラッパーKim Ximyaと、プロデューサー及びDJであるFRNKの二人で結成したアヴァンギャルド・ヒップホップグループ《XXX》は、FRNKのエレクトリックビートを基盤にした独特で前衛的なビートと、Kim Ximyaの計算的かつ攻撃的なラップで認知度を上げていっている、次世代ヒップホップの期待主です。最近、歌詞が厭世的になりつつあるKim Ximyaの刃を隠したラップと、FRNKのセンスが生き生きしているプロデュースの調和は今回も失望させません。「金の話はもうやめろ。I just wanna talk art. 芸術は人間、人間は欲望、欲望は金…Wait, hold up!」と続くパートの歌詞は、自己矛盾を表しつつシーンを批判することですごく印象的です。今じゃ、彼らが予告したファーストフルアルバムを楽しみに待っているのみです。早く出してくれないかなあ。

 

 

  1. KHUNDI PANDA – 실로(Silo / *Lost Way)

 On Gabriel Garzon Montano – The Game

 

「お前より勝るのは音楽しかないけど、俺らの目標が幸せならば、俺は何歩か遅れたさ」

有名でない一人の青年ラッパーが、リアルな音楽が金によって揺れてしまうことを淡々と話します。いい音楽と有名性の間で、自分自身の価値観まで否定してしまう自己矛盾な心理を、少しダンサーブルなビートの上で語るとき、聴者である僕は一人の青春として共感しました。淡々と語る話には、大衆音楽に向けてのとげが生えていて、聴くたびにすごく痛く感じます。韓国語がわからなくても、そのラップもすごいので、興味のある方はこれの入ったミックステープを(しかも無料ですので)ぜひ確かめてみてください。次世代の伝説になるだろうと自信をもって断言します。

 

 

  1. 오르내림(OLNL) – 유학생(Foreign Student)

Produced by Charming Lips

https://itunes.apple.com/jp/album/foreign-student/1340784445?i=1340784477

 

OLNLは独特な低い声と、また独特な高音を自由自在に使い、少年っぽい歌詞を歌いながら、独創的で同時に大衆的な音楽をする人です。彼のほぼボーカルに近いシンイングラップで、独りぼっちだった過去を、だれとも話の通じない「留学生」と比喩して歌います。《All Available》アルバムのリードシングルです。

 

 

 

  1. HI-LITE RECORDS – Break Bread

Produced by BIG BANANA,UGP

https://itunes.apple.com/jp/album/break-bread/1341582496?i=1341582505

 

Paloaltoが社長を務めるハイライトレコーズは2016-17年にかけてB-FreeやKeith Ape、Okasianなどのコアなメンバーが脱退してリスナーたちはここが再起できるのか不安になりました。それが杞憂であったと証明した、ハイライトレコーズの団体曲です。〈2期〉と言えるくらい新しくなったメンバーたちがラップする野望は、彼らの次のステップに希望を持たせました。Reddyのヴァースでハイライトのメンバー全員をシャウトアウトした部分も話題になりました。

 

7.Ja Mezz – 錬金術(Feat. Dok2, MINO)

Produced by Bangroz

https://itunes.apple.com/jp/album/alchemy-feat-dok2-mino/1359648939?i=1359648940

『鋼の錬金術師』をオマージュしたコンセプトのこの曲はJa Mezzというラッパーをもっと興味深くさせました。韓国のMoney Swagの開拓者であるDok2と、アイドルの枠を超えたパフォーマンスを見せるアイドルグループWINNERのラッパーMINOとの相性もよく、何よりどこか日本らしいソースを混ぜて黒魔術のようなムードを作るビートが一番貢献したのでしょう。この曲のミュージックビデオもモーションキャプチャーや魔術的なイメージなどがきらめく良作なので、ぜひチェックを。『鋼の錬金術師』のおかげか、日本語字幕が映像に直接貼り込まれています。

 

 

 

  1. NUOL – Finder (Feat. NO:EL, Hash Swan, Huckleberry P)

Produced by NUOL

https://itunes.apple.com/jp/album/finder-feat-no-el-%EC%9E%A5%EC%9A%A9%EC%A4%80-hash-swan-huckleberry-p/1397272149?i=1397272824

ベテランプロデューサーNUOLが3月末に出したアルバムは、多数の曲を1トラックに収めたことで話題になりました。その中で、NO:ELとHash Swan、Huckleberry Pがラップした部分は特に人気が得て、のちにトラックを分けて出したデラックスヴァージョンでも代表曲になりました。2000年生まれの新鋭NO:ELと、シーンでどんどん名を広めているHash Swan、そしてアンダーグラウンドの守護者とうたわれるHuckleberry Pが集まって起こすエネルギーがあなたを魅惑するに間違いありません(ドヤ)。

 

 

  1. JUSTHIS – THISISJUSTHIS / Don Mills – 랩저능아(*Rap Dumb)

Produced by JUSTHIS / Unknown Producer

THISISJUSTHIS https://itunes.apple.com/jp/album/thisisjusthis/1367869036?i=1367869038 

Rap Dumb

 

上半期の韓国ヒップホップシーンの最大イッシューと言えば、JUSTHISとDeepflowのビーフでした。話すと長いので(笑)簡単に言うと、アンダーグラウンド象徴であったDeepflowの変質をJUSTHISが批判し、Deepflowと彼が代表として務めるレーベルVMCのアーティストたちが対抗して起こったビーフです。その中、JUSTHISが発表した9分のディス曲はリスナーたちに熱い反応と論争を起こした。JUSTHISのリミッターが解除された怒り満タンのスキルフルなラップを聴けます。

一方、THISISJUSTHISが発表する前、VMCのラッパーDon Millsが発表したディス曲もカルト的な人気を得ました。JUSTHISの以前のディスヴァースで「ラップ低能児」一言で攻撃されたDon Millsは、その攻撃自体を逆に武器として、にぎやかなトラップに「ラップ低能児稼いでる、ラップ低能児respect受ける」という中毒的なサビなどが面白すぎて、Don Millsキャリア最高曲だとか、JUSTHISとDeepflowのビーフの最大受益者だなどと言われています。

 

  1. Kid Milli – WHY DO FUCKBOIS HANG OUT ON THE NET

Produced by 이수호(Lee Soo Ho)

https://itunes.apple.com/jp/album/why-do-fuckbois-hang-out-on-the-net/1358618057?i=1358618064 

韓国ヒップホップシーンに言葉通り彗星のように登場したKid Milliの初のスタジオアルバムは、ハウスサウンドを前面にしたプロダクションと、もっと多彩になったラップを詰めていて再び衝撃を与え、ヒップホップシーンの中心に堂々と入ってきました。この曲は、そのアルバムの実験的な色を代弁するような曲です。なぜKid Milliがフレッシュなのか、Just listen and feel(ドヤ2)。ちなみにこの方、ファッショニスタである同時にアニメ好きなオタクで、秋葉のメイドカフェで金をまくのが夢らしいです(彼の代表曲〈Honmono〉をチェック!)。

 

  1. Swings – Holy

Produced by 천재노창(Genius Nochang)

https://itunes.apple.com/jp/album/holy/1363950756?i=1363950810 

まさに韓国ヒップホップシーンのゲームチェンジャーだと言える、ベテランでありつつも常にイッシューを呼び起こす、強者ばかり集まった集団Just MusicとIndigo Musicの代表でもある、怪獣の称号が惜しくないラッパー、Swings。彼が出したアルバム自体の波及力もありましたが、それよりもこの一曲がもたらした論争は本当に激しく、それをもたらしたこと自体で、TOP3に入る資格があるでしょう。

18分もある大曲ですが、ラップは3分程度で収まって、ほかの15分はただただ彼が語るだけです(あえて言えば、Kanye Westの〈Last Call〉みたいな感じでしょうか)。ラップのヴァースでは、クリスチャンだった彼が神様に自分が苦しむことを述べながら、聖書についての疑問を直接問いながら(「地獄に送る理由一つであなたを信じたくはないさ」)、その神様が結果的に自分を助けることを求めます(「こんな僕の態度を疑うけど、息子はいつも問うもんだから。嘘つきだけが質問を避けるさ」「僕に才能を与えただろ、Jesus?あなたがいないからみんな追うのはYeezus」)。そして、論題は〈芸能人に対してのネット上で行われる魔女狩り〉に移ります。韓国内に存在する宗教人の多さや、それにもかかわらず互いの没理解が起こる理由について問い、そこで苦しむ自分を表して、イエスに助けを求めて終わります。

大衆に自分の考えを説破するナレーションの中、その主題については皆が共感するのですが、語られる際の論理が足りなかったり、学校内暴力事件の疑惑がある人を擁護したり(そのためのナレーションではありましたが)会社員を見下す姿勢などが批判されました。しかし、彼が投げた質問に、多くのリスナーが甲論乙駁を行うこと自体、彼の影響力を再び実感させることのできた、話題の一曲でした。

ちなみに、このビートは、彼のレーベルJust Musicのラッパー・プロデューサーである天才ノチャン(Genius Nochang)の名曲〈행(GOD)〉をサンプリングしたものです。ノチャンのプロダクションは常に高クオリティーで、彼にしか出せない独特なものがあり、その完成度とアヴァンギャルドさが高評価され、いつも期待を浴びるのですが、最近行方をくらましてしまったようで、みんなの心配を受けています。(この曲にも「ノチャンのために祈ってください」というナレーションがあります)天才ノチャン!戻ってきてください!!!

話が長すぎましたが、曲も長いんで、許してくださいね(ドヤ3)。

 

  1. JUSTHIS & Paloalto – Seoul Romance

Produced by GroovyRoom

https://itunes.apple.com/jp/album/seoul-romance/1356489565?i=1356489579 

上半期の一番の期待作といえば、やはり2016年衝撃的なデビューアルバム《2 MANY HOMES 4 1 KID》で登場した新鋭コンシャスラッパーJUSTHISと、常に淡白でよいバイブの音楽をしてきたベテランPaloaltoの合作アルバム《4 the Youth》だったでしょう。22トラックもあるアルバムの中で、〈Seoul Romance〉は、曲名が出す雰囲気とは真逆に、ソウルで暮らす二人が感じた人生の経験を述べながら、韓国社会の問題点を指摘するトラックです。その問題の捉え方が的確で、堅固なBoom Bapのプロダクション、そしてPaloaltoの重厚なラップとJUSTHISのいかれたラップの調和も素晴らしいです。韓国の知識人ユ・シミンの講演からのサンプリングもまた社会について考えさせます。「強盗に合った夢、生存本能だけか残ったソウル」「韓江の奇跡が浪漫を消したわが親の記憶の上に建ったピラミッド」

 

  1. 화지 (Hwaji) – 나 빼 (NAPPE / *Count Me Out)

Produced by Young Soul, O’NUT

https://itunes.apple.com/jp/album/%EB%82%98-%EB%B9%BC/1333422608?i=1333423312 

 

数年間続いた韓国ヒップホップシーンの最大論争は、「ヒップホップがマスメディアに侵食されているのか、それとも利用するべき機会なのか」についてです。日本の《フリースタイルダンジョン》のように、韓国でもラップ競演番組《Show Me The Money》が人気です。しかし、そのせいで大衆がヒップホップについてのステレオタイプなイメージを持ってしまい、その番組がパイの拡張より、ただ話題性の高い曲だけが売れる現象を作ってしまいました。そこでヒップホップシーンは「メディア擁護論」と「メディア批判論」で責め合ったり、常にメディアに批判的だったラッパーがいつの間にか言葉を変えてその番組に出るようなこともしばしば起きました。(そのような態度変換を批判した代表的な例が、リスト5番目に紹介したJUSTHISのディス曲です。)

自ら「現代ヒッピー」と名乗る、韓国トップレベルのリリシスト、Hwajiは、新しいEP《WASD》で、シーンをゲームに比喩して、ただ状況を楽しむ観照的な態度を取ります。「争う間に音楽をしろ」「俺はインディ、お前らはハンゲーム(大ゲーム企業)」「韓国ヒップホップに俺は抜け」という核心を突くサビが印象的です。そして、どれだけメッセージが詰まっても、説教的ではなく、むしろファンキーでレイバックされたグルーびーなビートのおかげで、本当にゲームをするように楽しみながら聞けます。結局どんな論理よりも、一番大事なのはやはりいい音楽を作ること。そして私たちはそのいい音楽を消費することが文化の発展につながるでしょう(最後のドヤっ)。

 

 

Honarable to Mention

Mild Beats – 불나방(ヒトリガ) (Feat. Chaboom)

https://itunes.apple.com/jp/album/%EB%B6%88%EB%82%98%EB%B0%A9-feat-chaboom/1400668495?i=1400668503

https://youtu.be/zLIXoyeyn-4

Swings – Keep Going (Feat. BewhY, nafla, ZICO)

https://itunes.apple.com/jp/album/keep-going-feat-bewhy-nafla-zico/1377599758?i=1377599911

 

 

Deepflow – 나다 이

 

Errday, Wet Boyz, ZENE THE ZILLA – GA ZU A

 

(ENG SUB 支援)

 

 

Futuristic Swaver – YABAI (Feat. Kaine Dot Co, TYOSiN, Moment Joon, Kor Kash, SKOLOR & Airplaneboy)

https://itunes.apple.com/jp/album/yabai-feat-tyosin-kaine-dot-co-moment-joon-kor-kash/1408536140?i=1408536152

(Short Ver.)