お久しぶりです。来年徴兵予定の韓国留学生です。前回書いた2018上半期韓国ヒップホップトラック記事が反応が良かったとのことで、(別によくなくても書くつもりでしたが、)今度もさっさと今年全体の決算をしていきたいと思います。
勝手に聴いて勝手に選んで勝手に並べる今年度の韓国ヒップホップシーンの注目すべきトラック、今度はなんと50曲をいっせいに紹介!ところどころに特別企画「スペシャル・アワーズ:ひとりGRAMMY」もよろしく!(説明を省く曲もございますが、それは単純に僕の怠惰と知識不足のせいであり、みんないい曲です。ご了承ください。)
選考基準 : 99%の閃きと1%の努力
50位
SUPERBEE, twlv – hunminjeongeum
Prod. Twlv
「フンミンジョンウム」は、韓国の文字のハングルの創製当時の名前です。本来の題名は「ガナダ」で、日本語で言う「いろは」、英語だと“ABC”みたいなものです。なぜかPlayboi Carti <Magnolia>サンプルの上で、ただただ「ガナダラマバサ!」(日本語だと多分「あかさたなはら!」の感じ)をラップするという、失笑せざるを得ないトラック。「最近の奴らは、なぜ歌に英語を混ぜとるんだ」と言った視線へのちょっとした皮肉です。
49位
Coogie – Coogie
Prod. P#000000
48位
Lil Cherry – Motorola (feat. Jito Mo)
Prod. sAewoo
47位
Balming Tiger – I’m Sick
Prod. No Identity
46位
Epik High x SEKAI NO OWARI – Sleeping Beauty
Prod. End of the World, Epik High, Rock Mafia
日韓の大衆性のあるチームが集まって、ソフトで悲しく美しい曲が出来上がりました。ちなみにEpik Highは、僕をヒップホップの道に、いや、音楽の道に連れ込んでくれたチームです。アニメでできたビデオもすごく美しいので、ぜひご覧を。
45位
HAON – NOAH (feat. Jay Park & Hoody)
Prod. GroovyRoom
44位
Futuristic Swaver – LONELY
Prod. Laptopboyboy (Futuristic Swaver)
現在コリアンアンダーグラウンドトラップシーンの最大のハッスラー、Futuristic Swaver(プロデューサー名Laptopboyboy)の最新アルバム収録曲です。強がりなswaggerと負け犬的劣等感が混じったおかしなキャラが彼なりの大胆なタッチとうまくあった、面白がっこいいトラップソングです。普通に自分が好きで選びました。あと、ビデオの日本語字幕はデタラメですのでご注意。
43位
Mild Beats – Grand Tiger Moth (feat. Chaboom)
Prod. Mild Beats
42位
Paloalto – Shelter (feat. ZENE THE ZILLA, Sway D, SUPERBEE)
Prod. Lnb
ベテランラッパーPaloaltoのサマーシーズンアルバム《Summer Grooves》の収録曲で、いろいろな新人の参加も特徴です。特に、最初のヴァースを担当するZENE THE ZILLAの、ネットのアンダーグラウンド愛好家のニックネームをシャウトアウトしたことで小さい話題にもなりました。
41位
BLOO – Downtown Baby
Prod. ROCK IT PRODUCTIONS
40位
CHANGMO – Holy God
Prod. CHANGMO
39位
Dakshood – GAME THEORY (feat. Tommy Strate, nafla, The Quiett, Kid Milli, Lil Cherry)
Prod. Dakshood
38位
Sway D – Color Gang (feat. Young Thugs Club & Woodie Gochild)
Prod. Sway D
37位
YunB – Clockwork (feat. EK, Khundi Panda)
Prod. YunB
ニューヨークから来たシンイングラップ中心のラッパー・プロデューサーYunBの初のフルアルバムに収録された曲です。無限的なトラップビートの上で、三人の新鋭たちが短くともインパクトのあるヴァースを投げ出していく曲です。参加した三人YunB、EK、Khundi Panda全員のこれからのキャリアが楽しみです。
36位
Jay Park – SEXY 4 EVA
Prod. Cha Cha Malone
韓国のスターJay Parkが、Jay-Zが頭にいるRoc Nationと契約し、初めて出したEP《Ask Bout Me》の収録曲です。「年齢・人種・身体条件を問わずに誰もがセクシーだ」というメッセージのビデオが印象的です。
35位
The Quiett – gui gam (feat. ZENE THE ZILLA)
Prod. Eddy Pauer
シーンのベテランラッパーThe Quiettのアルバムに参加した嬉しさが新鋭ラッパーZENE THE ZILLAのヴァースとサビで表れます。題名は憧れのモデルを意味する「亀鑑」という言葉の韓国語発音で、The Quiettが自分の憧れだったこと、そしてこれから自分がその憧れになっていくことについて楽しく語る感動的なトラップソングです。Eddy Pauerの可愛くピカピカするトラック、ZENE THE ZILLAの生き生きしたパフォーマンスとThe Quiettの余裕のあるパフォーマンスに注目!
34位
B-Free – CITY OF SEOUL
Prod. NoName, freefromseoul(B-Free)
以前、BTSを公開的にディスったことがあって、彼のほぼすべての映像は「悪い」表示が多いのですが、韓国ヒップホップで優れたバイブを披露する逸材です。特に彼のトラックメーキング能力がすごいことは、まあ直接聞いていただくとうれしい(笑)。
33位
Loopy – Save (feat. Paloalto)
Prod. CODE KUNST
独特なムードのラップメーキングを見せるラッパーLoopyと、同じく独特なムードのビートメーキングが特技のCODE KUNSTはラップオーディション番組で同じチームとして活躍し、話題になりました。そのチールなバイブが多くの大衆に好かれています。
32位
Ja Mezz – 錬金術 (feat. Dok2, MINO)
Prod. Bangroz
31位
Kid Milli – MOMM (feat. JUSTHIS)
Prod. CODE KUNST
30位
Leesuho – We Make Noise, Not Music (feat. Kid Milli)
Prod. Leesuho, Hipincase
Leesuhoは実験性の高いトラックメーキングが特徴のプロデューサー及び映像ディレクターです。予想のつかぬ曲とともに、奇妙でグロテスクな映像も要注意。
29位
250 – Rear Window
Prod. 250
プロデューサー250のインストゥルメンタル曲です。20世紀、韓国の民衆を躍らせたトロット(日本の演歌に近いジャンル)に現れる独特の情緒を研究しながらダンス音楽に取り入れようとするプロデューサーで、この曲もその研究の中間発表みたいな感じがします。そのバイブの下で写される、悲しい欲情をメタフォしつつも赤裸々に表現した映像もチェック!
28位
TakeOne – Bloom
Prod. Pleyn, Dakshood
「一人の女性について話したい。顔だけでなく心が一番きれいな、あなたのような女をまた会えるのなら、僕ももう一度息子として生まれたい」
以前の上半期決算の記事でデモ曲として取り上げた曲で、その後完成版が出ました。
27位
HAON – Boong-Boong (feat. Sik-K)
Prod. GroovyRoom
26位
NO:EL – Parrot (feat. GIRIBOY, Han Yo Han)
Prod. Suwoncityboy
現在高校生の現役ラッパーNO:ELに対する評価が高い理由は、これを聴いただけでもすぐにわかると思います。ちなみにこれは、彼の「セカンド」フルアルバムの曲です…。既に完成型に近く、これからの活躍も期待される少年は、この曲で自分をアイドル視して型にハメようとする、また自分を知らずにただただ嫉妬やルーマーの悪口をつぶやく、色々な存在に対して、怒りを爆発させています。Han Yo Hanの気がせいせいするシャウティング・フックも見所です。
半分来たところで特別企画…!
スペシャル・アワーズ#1
BEST PRODUCER OF 2018
Jflow
今年はやたらとプロデューサーたちの活躍が印象的でした。紹介したいプロデューサーたちがいっぱいいる中で悩みましたが、やはり優勝(?)はこの方、ヒップホップチーム“Wavisabiroom”のラッパーでありながら同時にR&B/Soulチーム”Hippy was Gipsy”のプロデューサー、Jflowです。
自然なソースと曲構成で余韻を残し韓国的なムードを作り上げていく、独創性と完成度を同時に担保するプロデューサー。それに、今年だけで“Hippy was Gipsy”のアルバムを二枚と、彼が全曲プロデュースしたラッパーJJANGYOUのアルバムなど、作業量の面でも優位を取り、それらのアルバムすべてがクオリティの高いというすごさ。それらの点を踏まえて、今年を代表するプロデューサーに堂々と勝手に任命しちゃいます(笑)。
すごく惜しい候補
FRNK:エレトリック・ヒップホップチーム“XXX”のプロデューサーで、たぶん現在韓国ヒップホッププロデューサーの中で一番すばらしいビート・パフォーマンスを見せる人。
その他の候補群
GIRIBOY, Coa white, Code Kunst, Dakshood, IOAH, Eddy Pauer,Leesuho, Laptopboyboy, HD Beatz, Nerdy coke, etc…
25位
pH-1, Kid Milli, Loopy – Good Day (feat. Paloalto)
Prod. CODE KUNST
ラップオーディション番組『SMTM』シーズン7の一番の人気曲です。余裕のある独特なバイブを持ったCODE KUNSTのビート、Paloaltoのサビ、参加陣の話題性と優れたパフォーマンスなどが大衆の心を刺激しました。
24位
areyouchildish (OLNL X Cosmic Boy) – merry go round
Prod. Cosmic Boy
独特なトーンで子供感性の爽やかなシンイングラップが特徴のOLNLと、彼とよく合作するフューチャーベース専門のプロデューサーCosmic Boyのプロジェクトチーム『areyouchildish』のリードシングルです。言い訳をしながら子供たちを同じところで回してだます大人たちを「メリーゴーラウンド」に比喩したのが特徴です。
23位
Jay Park – Finish Line (feat. Jvcki Wai, SUPERBEE)
Prod. Cha Cha Malone
22位
OLNL – SWEET (feat. Samuel Seo)
Prod. dnss
彼の音色は聞いたらすぐわかるくらい独特なシンイングラッパーです。そして、主な音楽のテーマは「子供の視線から見た世界」です。〈SWEET〉という題名をつけて最初のヴァースに出てくる「飴を食べすぎて歯が痛いよ」という歌詞を聴いたとき、感嘆しました。あと、フィーチャリングのSamuel Seoも本当に独創的で優れたHip-Hop/R&B歌手・プロデューサーです。
21位
SUPERBEE – SUPERBEEWHY (feat. BewhY)
Prod. Truthislonely (BewhY), CHANGMO
ラップオーディション番組『SMTM』シーズン7の参加者SUPERBEEと、シーズン5の優勝者でレジェンドになっているBewhYの曲。二人とも華やかなラップスキルで注目されたのですが、特にこれを持ってBewhYは、彼のプロデューシング能力も再評価されそうです。圧倒的なラップ、そのバックにもっと圧倒的なプロダクションを、ぜひ楽しみなされ。
20位
JUSTHIS & Paloalto – Switch
Prod. Yosi
若いインディペンデントアーティストのJUSTHIS(現在はIndigo Musicレーベルに所属してます)と、キャリアを積んだベテランラッパーでありながらHI-LITEレーベル代表のPaloaltoが、各自の立場や視線、その立場のせいで混乱する状況について、優れたラップで語り合う曲です。
19位
Swings – Shit Is Real (feat. The Quiett, GIRIBOY, Kid Milli)
Prod. IOAH
意外と象徴的な曲です。「ヒップホップをアップグレードさせてきた者が、今度は自分をアップグレードさせる」というテーマで発売されたアルバム《Upgrade III》で、今までの仲間、これからの仲間とともに勝利を宣言するトラックです。新鋭プロデューサーIOAHのマイルドなビートの上で、ベテランの勝利の証明と、新鋭の野望あるヴァースを聴いてみてください。特にKid Milliのヴァースが伝説並みということもあって持ってきました。Swingsの「ヒップホップだけじゃなく文化を変えたさ」の歌詞が印象的です。誇張じゃなく、リアルなので。
18位
JUSTHIS, Kid Milli, Young B, NO:EL – IndiGO
Prod. BRLLNT
去年新生のレーベルで、今年最大の成果を出しているIndigo Musicのコンピレーションアルバム収録曲です。4人のエネルギーとスキルの詰まったロウさが特徴で、徐々に話題になって、アイドルポップやバラードが主のチャートでどんどん順位が上がっている恐ろしい曲でもあります。すでに名盤を出したJUSTHIS、今年最高の活動量を見せるKid Milli、高校生とは思えない実力のNO:ELとYoung B(こっちは今年卒業)まで集まった、存在がチートな曲だとも謳われます。
17位
Moldy – GodDy
Prod. Black AC
オルタナティブヒップホップを目指すラッパーMoldyの注目のEP《Internet KID》の収録曲です。テクノロジー・ネイティブ世代にふさわしい代案的なswaggerを求め、本能的なラッピングが一番人工的な題名の下で披露されるという、いろいろな解釈の余地のある曲です。というか、普通にラップもビートもすごいです。
16位
Keith Ape – The Ice Ape (feat. Chief Keef)
Prod. Oogie mane
〈It G Ma〉から三年。ついに出たKeith Apeのアルバム…!混迷で紛らわしく、呪術的にまで感じるこのローファイ・ハードコア・ヒップホップは韓国でも前例がない、注目すべき一作です。それにフィーチャリングがあのChief Keefだよ?マンブルの始祖、Chief Keefなんだよ?!
15位
Drunken Tiger – Timeless (feat. RM of BTS)
Prod. Loptimist
Drunken Tigerについて申しますと、まさに韓国ヒップホップの始祖となる方。今回がこの名義で出す最後のアルバムになるといい、プロデューサーLoptomistのオールドでハイクォリティなトラックとともにカムバックしました。そこに、今、劇的に浮上中のアイドルBTSのラッパーの参加は結構象徴的です。20年もの昔、アメリカからヒップホップを持ち込んできたDrunken Tigerと、現在、その産物の上で生まれたポップを再輸出しているBTSの出会い。色々と象徴の詰まっていて、(BTSのファンダム力ではあるものの)米iTunesヒップホップチャートで1位を取ったりすることも。
14位
Hwaji – NAPPE
Prod. Young Soul, O’NUT
自ら「現代ヒッピー」と名乗る、韓国トップレベルのリリシスト、Hwajiは、新しいEP《WASD》で、シーンをゲームに比喩して、論争や二分法に巻き込まれずただ状況を見守る観照的な態度を取ります。どれだけメッセージが詰まっても、説教的ではなく、むしろファンキーでレイバックされたグルーびーなビートのおかげで、本当にゲームをするように楽しみながら聞けます。
13位
GIRIBOY, Swings, Kid Milli, NO:EL – flex
Prod. GIRIBOY
YouTube音楽コンテンツDingoとレーベルIndigo Musicの合作で、フレッシュでキャッチ―なサビとビート、ラップが特徴の楽しい曲です。チャートの1桁順位まで上がったことで、インターネットコンテンツの威力を実感させつつ、「服」「ファッション」について語るユニークな中毒性のある曲です。最初は「なんだこのうざい曲は」と思ってましたが、この記事書く途中ではまっちゃいました。
12位
Dakshood – Money Man (feat. Ja Mezz, Hash Swan, Bill Stax)
Prod. Dakshood
プロデューサーDakshoodは古典的なサンプリング技法でトレンディーなトラップナンバーまでも作ってしまう、非常に優れたプロデューサーです。そんな彼の堅固で可変的な、中毒性のある素晴らしいプロダクションに、よく協業しあうラッパーJa Mezzのさらに中毒的なサビ、Hash Swanの独特なトーンと自由に流れるフロー、ベテランラッパーBill Stax(旧VASCO)のトラップフローなどが合わさって、素晴らしい完成度のMoney Swagを作り上げました。
11位
BewhY & Crush – 0-100
Prod. Truthislonely(BewhY), Crush
オーディション番組で優勝し、スターになっていってるラッパーBewhYと、既にチャートキラーのヒップホップ・R&B歌手Crushがとある音楽放送で発表した曲です。なんと、トラップのビートに、「クリスチャンの信仰」をテーマを持って、(先のBewhY参加曲でも言った表現ですが)圧倒的なプロダクションとパフォーマンスを披露します。勇壮で大胆な演奏と、リミッターのないラップの協演を楽しみなされ。
ベスト10を残してまたまた特別企画
スペシャル・アワーズ#2
BEST NEW ARTIST OF 2018
Jclef
色々とユニークな新人が現れた年でもありましたが、その中で一番刮目してみるべき人物は、抜群の完成度を見せたデビューアルバム《flaw,flaw》の主人公、ラッパー及びシンガーソングライターのJclefでしょう。マイルドで安定感のあるボーカル・ラップのパフォーマンスと、その中で鋭い通札力を見せる歌詞、それをアルバムとして積み上げる能力はほぼベテランに準するほどです。
ヒップホップ、R&B、そしてフューチャーベースのバウンダリーまでも自然に乗り越え、彼女自身の音楽世界を早くも確立した、新たな吟遊詩人。
すごく惜しい候補
Uneducated Kid:ギミック中心のトラップミュージックが生み出してしまった怪人…。名前のごとく何も考えずただただF L E X I N ‘を歌う彼の馬鹿らしく中毒性のある異様なパフォーマンスをご覧あれ。
その他の候補群
ZENE THE ZILLA, Leesuho, Coa white, Paul Blanco, Leellamarz, BRADYSTREET, etc…
10位
JJANGYOU – NABI
Prod. Jflow
ラッパーJJANGYOUはチーム『Wavisabiroom』などでエネルギーが充満した感覚的でユニークなラップをする人です。曲のプロデューサーJflowは、同じく『Wavisabiroom』ではラッパーとして、そしてアジアンオルタナティブR&Bチーム『Hippy was Gipsy』でプロデューサーを務める人です。この曲が収録したJJANGYOUのセカンドアルバム《KOKI7》は、余韻を残して落ち着いたプロダクションが特徴のJflowと、エネルギーの詰まったJJANGYOUが、奇妙にうまく混じった優れた一作です。幼いころ家を出た母に対する愛憎をぶつけた、ユニークで美しい思慕曲です。ラッパーとプロデューサーの正反対の特徴がどちらも生かされたのが素晴らしいです。
9位
Uneducated Kid – Homeschooling
Prod. Eddy Pauer
独歩的なギミックを持つUneducated Kidの衝撃のデビュー曲。2分前後の短いタイムに、爽やかなメロディーと、それとミスマッチする、本土のバカげたトラップソングをそのまま翻訳したような歌詞など、衝撃を免れない登場でした。コピーキャット問題を逆手にとって自分のアイデンティティとした会心の一撃であり、本当に注目すべき今年の新鮮な発見。言いたいことはいろいろありますが、何よりも、ピンクのランドセル背負って明るい声で「昨夜俺は銃口を向けたぜ」とか言うんじゃねぇよ!
8位
Kid Milli – WHY DO FUCKBOIS HANG OUT ON THE NET
Prod. Leesuho
上半期の記事でも結構高い順位で紹介した曲ですが、僕が考える以上にこの曲が持つ意味はすごいです。本当に、韓国ヒップホップシーンのニュー・キングの到来を意味する、そのプロダクションからラッピングのスタイルまで真新しいルーキーの登場を知らせた曲なのです。今、実際に彼のファッションをまねるヒップスターたちも増えるなど、その影響力の根源として、この曲があったと言えます。
7位
Jclef – Before an Hour of Collapse
Prod. Coa white
素晴らしい作品《flaw, flaw》で突然現れた女性ラッパー・シンガーソングライターのJclefは、何よりもその安定的で余裕のあるパフォーマンス、深層的な歌詞でどんどん注目を浴びている新鋭です。この曲では〈地球滅亡一時間前〉という題材を用いて、内面の欠点をそのまま直視し受け入れる過程を淡々と描いています。
6位
Bassagong – HBD
Prod. Sultan of The Disco
「船乗り」という意味の名を持つ、レトロ感充満なラッパー「ベッサゴン」のセカンドアルバム《TANG-A》(「蕩児」という意味です)は、70-80年代韓国のサイキデリックロックサウンドをヒップホップの文法に合わせて作ったプロダクション、その上で貧しい音楽人の浪漫をウイットよく、時には正直に語る名作です。この曲では、やっと咲き始めたような状況を「ハッピーバースデー」と祝います。この祝いが続くことを願うばかりです。
ちなみに、この曲をプロデュースしたSultan Of The Discoは、レトロ・ブラックミュージックを基盤にしたユニークで優れたバンドです。こちらも最近アルバムが出て、逆にベッサゴンがフィーチャーリングした曲があるので、ぜひご必聴を…
5位
Jvcki Wai – Enchanted Propaganda
Prod. Eddy Pauer
新鋭女性ラッパーJvcki Waiの初のフルアルバムでは、彼女のアナーキスト・コンセプトがもっと進化しました。韓国第一のオートチューン使いで、その優れたローファイなプロダクションも誇るべきですが、彼女の語る世界観は想像を超えます。彼女の「プロパガンダ」に発揮されるものであり、その戦争の対象は現代社会のシステム、つまり資本主義の転覆を歌うという、恐ろしいテーマを持った、恐ろしく新鮮で、恐ろしい完成度のトラックです。
4位
E SENS – MTLA (feat. Masta Wu)
Prod. Decap, 250, FRNK
2015年、「韓国音楽史名盤100選」にも選ばれた傑作《The Anecdote》を収監中に出したE SENSが、今年ようやく新しいアルバムを出すそうです。今回出た余裕で少し寂しく聞こえるリードシングルは、ミニマルなエレクトロヒップホップの上で、韓国の資本主義に対する疑問を個人の視点で叙述して「LAへ去りたい。しかし去れない」と矛盾を見せる歌詞など、素晴らしいです。今後のアルバムがどのように展開され、この曲がどんな役割をするか、楽しみにしています。誇るべきラッパーでリリシストのE SENSは、アイロニックにもアメリカから入国禁止されているらしいです。
3位
FANA – Guiding Star
Prod. G-Slow
ラッパーFANAを一言で定義するならば、「ライム・モンスター」です。歌詞に韻を詰め合わせる能力はだれにも負けないワントップ。そして、シーンを掌握していくメディアに逆らい、自らの働きも見せたアーティスト。しかし、今年出たアルバムの題材は、パニック障害の闘病記でした。その障害に陥った状況を強迫的なライミングで、闇に包まれた歌詞と声で苦しく語ります。その中でこの曲は、そんな絶望の中で自分を導いてくれる星を求める、切迫だからこそ美しい曲です。
この曲が重要なもう一つの理由。元々これは彼のライブ専用曲でした。それが今更、「あまり残っていないライブファンの許可を得て出した」という寂しい背景、それでも彼の状況とぴったり合う、いろいろと意味のある曲です。
2位
XXX – Ganju Gok
Prod. FRNK、Echae Kang
エレトリックを基盤にした、ラッパーKim XimyaとプロデューサーFRNKで結成されたデュオXXX。FRNKのトラックメーキング能力はまさに世界に誇れるユニークさと完成度を保ち、その上でパフォーマンスするKim Ximyaのラップもトップレベルを占めています。彼らの最近出したアルバムはまさに革命的であり、特にこの曲のビートは今年の韓国ヒップホップで最高のビート・パフォーマンスを誇るであろうと自負します。
そして、ついに1位発表…!
…の前に、
スペシャル・アワーズ#3
BEST HIP-HOP ARTIST OF 2018
Kid Milli
はっきり言えます。「今年は彼の年だ!」と。独特なリズム感と皮肉な歌詞、トレンドの先を走るビートチョイスとファッションセンス。今年だけで3つの個人アルバムとレーベルのコンピレーションアルバム、数えきれないくらい大量のフィーチャーリング…。それに、ラップオーディション番組《Show Me The Money》に参加し3位を収めるなど、本当に爆発的な作業量とインパクトを見せました。去年やっとハイプを受けてから一年たたずでこのユニークさと実力、波及力はめっちゃ半端ないって。
すごく惜しい候補
Hippy was Gipsy:「アジアンオルタナティブ」というジャンル自体を開拓し、今年も良質のアルバムを二枚も出した、プロデューサーJflowとボーカリストSepで構成されたR&Bチーム。なぜ選べなかったかというと、ジャンルがヒップホップじゃないから…。(むしろなぜ選ぼうとしたかというと、ブラックミュージックだし、二人ともほかのところではラッパーをしていることもあって…。)
その他の候補群
どう考えてみても Kid Milliの存在感が強力すぎて、候補すらまとまらず…
まあ、それでも、名盤を出したXXXやBassagong、FANA、そしてアメリカ進出という快挙を果たしたJay ParkやKeith Apeなどをあげれると思います!
じゃあ、ついに1位発表…!
1位
XXX – Sujak
Prod. FRNK
上位2曲を全部XXXにあげたのは単に僕がファンであるから…じゃないと堂々と言えるのがうれしい(笑)。ヒップホップよりエレトリックを基盤にしたサウンドソースをいっぱい取り入れてばらまけても安定感のあるビートメーキングに、その上で彼らの望む芸術と現実の乖離をすごく冷たい視線で歌うKim Ximyaの印象的なラップまで。そしてまた、そのラップのソースを使っていろいろな実験を行うことで、ジャンルのバウンダリーはもちろん、芸術における「形式」と「内容」の境界線までもこれで破ってしまった一作です。厭世的な歌詞と、疾走するビートがうまく合わさった、今年のヒップホップ最高の名曲です。
でも、これで終わりじゃないぞ…?
0位⁈
Mommy Son – Shonen Jump (feat. Bae Ki Sung)
Prod. Ye-Yo!
現在炎上中のネタ。この炎上の原因を挙げるともう複雑すぎるので、ざっくりだけ言っておくと、最近劣れ気味の人気ラッパーMad Clown「と推測される者(ココ大事)」がオーディション番組に「覆面」を被って登場したが派手に脱落し、その数日後に発表された、「悪党ども(審査委員陣)が俺を落とそうと、少年ジャンプの主人公のように立ち上がるぞ!」というメッセージを含んだ、現在最大の話題曲。よし、一文章で収めたぞ。(なぜか日本語字幕も支援します…)
ミームだらけのギャグソングとして捉えられますが、面白くつぶやいているアーティスト自身やシステムの矛盾性など、いろいろと解釈すべき価値を持ち、そこに多くの大衆が共感したという、今年を代表する断然なる一曲です。
ついに終わりです。
読んでくれた皆さん、書いた俺、みんなお疲れさまでした…
その後も調子乗りすぎ兵役対象者の韓国留学生による
《2018 BEST KOREAN ALBUMS》
《近10年間、韓国大衆音楽で聴くべきアルバム》
などなどの記事… (maybe?) Coming Soon!