作者別: wasereco_staff

2019 K-POPグラミー賞!―ワセレコ員(個人)が(勝手に)選びました!―

 

あと2か月足らずで母国の徴兵に行く留学生です。

 

最近、GRAMMY AWARDSの授賞式があって、意外と革新的な―というか前からそうすればよかったのに―授賞結果に感動し、うちの音楽界も広く知られたらいいなあ、という意味で、浅い知識にもかかわらず、去年聴いてきたいろいろな音盤をこの機会に紹介していきたいと思います。

 

この記事で紹介する音盤や曲らは主に色々なWeb ZINEや愛好家・批評家たちのお勧めとレビュー及び年末決算、そして「韓国大衆音楽賞」の候補群などから聴いて、自分の浅い知識と偏見のこもった嗜好と都合で選んでいます。ので、まあ一人の意見及びおすすめリストとして受け取ってもらえるとうれしいです。

 

では早速行きましょう!

 

選定期間:2017.12.01~2018.11.30

 

 

 

 

 

GENRE FIELDS

 

 

 

BEST POP ALBUM

 

Lee Jin Ah Jinah Restaurent Full Course

 

 

ユニークな音色と独歩的な演奏実力、心安らかでウイットのある作詞・作曲まで、本当に魅力が多すぎる「フルコース」です。ジャズを基盤にヒップホップ、エレトリックなどのジャンルを取り入れているにもかかわらず、きっちりと整えられて聴きやすいサウンドで迎えてくれます。僕らが日常の中で出会う感情を描き出して、音楽を通じて共有するその場がすごく平和でより取り見取りです。

 

候補群

  • BTS 『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』
  • SHINee 『‘The Story Of Light’ Epilogue』
  • NCT 127 『Regular-Irregular』
  • イ・ムンセ 『BETWEEN US』

 

 

 

BEST ROCK ALBUM

 

Asian Chairshot IGNITE

 

 

ロックバンドなのに、まるで楽しい伝統農楽を聴いてるみたい!というのが初感想です。いわば「韓国らしい」ロックです。これをどう説明するべきかは知りえませんが、とにかくこのアルバムは「恨」の感情を「興」として昇華します。エネルギーに耐えきれず外部に怒りを吐き出しつつもサイキデリックで観照的な姿も見せますし、強烈に走りますがどこか空虚です。固有の正体性は混乱で、渡ってきた道も行くべき目的も失ったが、我らの青春はただ美しく燃え上がっているのを、強烈なエネルギーをつぎ込んで証明します。

 

候補群

  • Decadent 『Decadent』
  • Say Sue Me 『Where We Were Together』
  • 柴雨林 『Jaurim, 10』
  • Kiha & The Faces 『mono』

 

 

 

BEST METAL ALBUM

 

Dark Mirror Ov Tragedy THE LORD OV SHADOWS

 

 

まあ、自分自身メタルに全然詳しくないですが、それでも圧倒的なヘヴィネス・オーケストラの饗宴です。各セッションの素敵な演奏たちが、図り切れないほど緻密な構成のもとに集い、アルバム全体にかけて巨大な一曲を完成していく光景を聴くと、本当に感嘆の連続です。引くときは引き、クライマックスでは絶えずに突っ走る演奏とグロウルは我らを闇の世界につき込んで、自分の中の影(Shadow)と奮闘する過程を描き上げます。闇が積み上げる華麗さにみんなと一緒に感動されたいです。

 

候補群

  • Plugged Classic 『Sabai』
  • Day Of Mourning 『This Too Will Pass』
  • Noeazy 『Triangle』
  • Memnoch 『COMMAND HALLUCINATION』

 

 

BEST FOLK ALBUM

 

空中泥棒 Crumbling

 

 

一応、フォークに入れましたが、フォークだけでは定義できないほど色んな実験が重ねられたアルバムです。ギターとシンス、声そして様々なサンプルが不安定に漂い、それでも何らかの規則を作ってその場を圧倒させる力を持つ、奇妙で感動的な音楽を持っています。歌に漂う小さなノイズたちが集まって大きいエネルギーに変わっていくその瞬間はまさに圧倒的です。

 

候補群

  • Jang Pil Soon 『soony eight : so gil hwa』
  • Kim Hae Won 『Sea and Myself』
  • Kim Sawol 『Romance』
  • Kang Asol 『The Day Of Love』

 

 

BEST R&B ALBUM

 

Naul Sound Doctrine

 

 

韓国を代表するR&B/Soul歌手ナオル(Naul)の本作にはソウル(Soul)の精髄を取り入れた濃い味の曲でいっぱいです。強いソウルの香りがするプロダクションの上で、韓国最高のボーカリストと呼ばれるナオルの解釈は常に驚きの連続です。ファンク、バラード、ゴスペルなどを詰め込み、ナオル自身のクリスチャンとしての信仰を示した言語はアルバムとしての統一性まで付与し、完成度を高めました。

 

候補群

  • Hippy was Gypsy 『Empty Hands』
  • Jclef 『flaw, flaw』
  • SUMIN 『Your Home』
  • Hippy was Gypsy 『Language』

 

 

BEST HIPHOP ALBUM

 

XXX LANGUAGE

 

 

プロデューサーFRNKの予測不能なインダストリアルビートとKim Ximyaの実力のあるラップが、この音盤が持つすべてのアイロニーを支えてくれます。主流を拒否する音楽的「形式」の中で、主流に受け入れられない現実に対する怒りを示す「内容」を詰めて、さらにそれを「形式」の中で無慈悲に捻った当惑な音楽です。典型的な成功神話をぶち壊し、外部と内部の矛盾をずっと告発する話者の混乱、そしてその心理をもっと混乱に描く最上級のビートパフォーマンスは、韓国だけでなく世界でも真新しい音楽ではないかと思います。

 

候補群

  • Bassagong 『TANG-A』
  • FANA 『FANAbyss』
  • JUSTHIS & Paloalto 『4 the Youth』
  • Kid Milli 『AI, THE PLAYLIST』

 

 

BEST ELECTRONIC ALBUM

 

KIRARA Sarah

 

 

KIRARAの音楽は綺麗で強いです。僕らを躍らせるビートに潜んだ感情のベースは悲哀と怒りです。なのでビック・ビートを中心としたパーカッションは何かを壊しにかかる感じですが、その上を包むコードとメロディーは繊細で美しく、楽しさを与えてくれます。ロマンティック性から攻撃性まで、僕らの感情の本能を刺激するKIRARAの電子音遊びは、僕らを心配(「Worries」)し、一緒にのぞみ(「Wish」)、雨の中でも踊って(「Rain Dance」)、この場所に居続ける(「Stay」)勇気を与えてくれます。

 

候補群

  • Byul.org 『Nobody’s Gold』
  • Dongchan 『Fog』
  • YESEO 『Damn Rules』
  • Aseul 『ASOBI』

 

 

BEST JAZZ ALBUM

 

Jungsu Choi Tiny Orkester Tschuss Jazz Era

 

 

ジャズを全然知らない筆者ですが、KMA(韓国大衆音楽賞)ノミネートの短評に書かれた「完全な韓国のビッグバンド」という言葉一つを基に鑑賞しました。にもかかわらずこのアルバムに感動した理由は、ジャズ界の最高クラシック『Kind of Blue』が連想されたからでしょうか。僕がジャズを聴くときに求める、即興性と協奏のシナジー効果が伝わってきました。

 

候補群

  • Nam Yoosun 『Strange, But Beautiful You』
  • Youngjoo Song 『Late Fall』
  • Sunji Lee 『SONG OF APRIL』
  • Seo Sujin 『Strange Liberation』

 

 

BEST WORLD/CROSSOVER ALBUM

 

AASSA Tres BonBon

 

 

「生の!」「生き生きした!」「土俗な!」としか言い表せられないのですが、それだけで何ですか。即興的なジャム合奏がアフロミュージックの楽器と共に調和する瞬間にただ驚くだけのことです。韓国語と西アフリカの言語でできた歌詞は理解に難しいかもしれませんが、リズムとメロディーからその悲哀のこもった楽しさは十分伝わってこないでしょうか。

 

 

候補群

  • Park Jiha 『Philos』
  • Near East Quartet 『Near East Quartet』
  • Dongyang Gozupa 『Gap』
  • Hyunpil Shin, Heean Ko 『Dear Chopin』

 

 

 

 

MEDIA/PRODUCTION FIELDS

 

 

BEST MUSIC VIDEO

 

BTS FAKE LOVE

 

候補群

  • Sultan of the Disco 「Tong Bae Kwon」
  • DEAN 「instagram」
  • (G)I-DLE 「LATATA」
  • Dark Mirror Ov Tragedy 「I Am The Lord Ov Shadows」
  • Balming Tiger 「I’m Sick」
  • Kiha & The Faces 「Cho Shim」
  • Mommy Son 「Mommy Jump (feat. Bae Ki Sung)」

 

 

PRODUCER OF THE YEAR

 

バン・シヒョク(BTS『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』など)

 

 

 

 

候補群

  • Jflow(Hippy was Gypsy『Language』『Empty Hands』、JJANGYOU『KOKI7』など)
  • SUMIN(SUMIN『Your Home』など)
  • Kenzie(Red Velvet『The Perfect Red Velvet』『RBB』など)
  • FRNK(XXX『LANGUAGE』など)

 

 

 

 

GENERAL FIELDS

 

 

BEST NEW ARTISTS

 

Jclef

 

 

女性ヒップホップ・R&Bのボーカリスト及びラッパーであるJcelfは『flaw, flaw』という音盤の題名ごとく内面の欠落を直視しながら、自分の弱さを受け入れる過程を文学的に昇華した完成度の高いアルバムを出して批評界とマニア層の注目を集めました。内面の欠陥をある目標に到達できないことから生み出すと悟り、世が与えた目標そのものの虚無性を告発することで自分自身を受け入れるという、時代精神の真っ最中にある思想を深く考察し、ラップとボーカルの境界を無色にするパフォーマンスと共に自分の言語で語り掛ける、突然の発見です。

 

 

候補群

  • Wussami
  • Jvcki Wai
  • AIRY
  • Motte

 

 

RECORD OF THE YEAR

 

XXX Ganju Gok

 

 

オーケストリアルなセッションで華麗なイントロから、すべてを壊してエレトリックなインダストリアルサウンドに転換し、より力動的な展開になります。その後どんどん変奏していくビートパフォーマンスに身をゆだねると、いつの間にか最小限のサンプルだけ残り、Kim Ximyaの嘲笑的なラップが入ります。「韓国は俺の音楽が嫌いだ。それは誰のせいでもないけど、実は知ってんだよ、俺の退屈な歌が原因だから」と、彼の両価的感情がこもった強いラインは、市場に対する疑問が当てのない怒りに変わっていくアルバムの筋において本当に「間奏曲」としての役割を果たします。華麗でありながらもコンパクトな構成で調和を成し遂げたトラックで、2018年の韓国ヒップホップで一番素晴らしいプロダクションだと確信します。

(注:「Ganju Gok」は「間奏曲」という意味の韓国語の発音をそのままローマ字に表した題です。)

 

 

候補群

  • Asian Chairshot 「Round and Round」
  • BTS 「Airplane pt.2」
  • SUMIN 「In Your Home (feat. Xin Seha)」
  • Kiha & The Faces 「That’s Just What You Think」
  • Byul.org 「Bats We Are」
  • ADOY 「Blanc (feat. George)」
  • (G)I-DLE 「LATATA」

 

 

SONG OF THE YEAR

 

DEAN instagram

 

 

PBR&Bジャンルの空虚感のあるプロダクションの上でK-POP特有のキャッチな旋律がよく混じり合い、彼独特のアイデンティティーを作り出す歌です。シンガーソングライターのDEANが考察するInstagramは、現実の傷や虚無感から脱出する術でありながら、同時にフィードから流れ込む圧倒的な情報量に溺れ、彼と住む世界の違う人たちの様子がフラットに映し出され、その比較からさらに不幸な感情に陥ってしまうものです。人間関係がインスタの「いいね!」によって決まる「情報化時代」はすでに来ていて、話者は現実からも仮想からも苦しみ続けます。その無力な憂鬱さは、我々も共感のできる、まさに「情報化時代」の集団的副作用ではないでしょうか。

 

候補群

  • XXX 「18G 1517」
  • KIRARA 「Worries」
  • Lee Jin Ah 「RUN (with GRAY)」
  • Decadent 「Tomato Homicide」
  • Jvcki Wai 「Enchanted Propaganda」
  • Sultan of the Disco 「Hide Out」
  • BTS 「IDOL」
  • Mommy Son 「Mommy Jump (feat. Bae Ki Sung)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ALBUM OF THE YEAR

 

 

空中泥棒 『Crumbling

 

 

得体の知れないアーティストが何のプロモーションもせずに突然アルバムを出しました。音質は悪く、歌詞は聞こえない。一応フォークとは書いたものの、ジャンルも全然わからなく、実に奇妙。かといってアヴァンギャルドな不気味性があるかと言うと、むしろそれに比べたらポップとも呼べるくらい聴きやすい。弱く響く音たちが巧妙に重なり合い、「圧倒的な瞬間」(ナ・ウォンヨン氏のレビューから引用)を築いて行きます。なのに、題名は逆説的に『Crumbling』。「崩れ」でも、「崩し」でもない、「崩れる様子を能動的に表した名詞形」の題名。
では、いったい何が「レッツ崩壊!」しているのでしょうか。時間に沿って繰り返されるべき音の展開の裏切りかも知れません。今作に来てようやく公開した歌詞で歌われる世界の崩壊をそのまま指すのかも知れないです。
崩壊といえば、時々出てきて展開を転覆させるノイズを思い出させます。この作品のノイズはシューゲーズやノイズポップのような、極端なディストーションから出てくるものとは違う。(もちろんディストーションがないと言うわけではないですが。)そのノイズの正体は、色々な楽器、声、騒音など、先から薄いけどずっと少しずつ時間を構成してきた音たちがついに一箇所に集まって何かを「築いた」その時に、ノイズとしてその時間を「崩壊」させるのです。
老婆心に言っておくと、これは全く過激な作品ではありません。気楽に聴けるサウンドでできたアルバムです。それに、今までこの作品についてずっと否定語で定義してきましたが、だからといってなにかのアンチテーゼで作られた実験目的の作品でもないです。そこにはただ音の遊戯があって、韓国語がわからなくても構わない。人間の声は音楽を構成する一部に過ぎないので。(韓国人のぼくでさえも歌詞を理解しながら聴くことは不可能です。)しかも、キャッチーで楽しい。
いかに緻密なのでしょう。騒音を不規則に交え、ジャンルを計り知れず、構成の規則を破壊しながらも、郷愁のようなものまで起こしうる、研究しがいのある不思議な美しさです。

 

候補群

  • XXX 『LANGUAGE』
  • Dark Mirror Ov Tragedy 『THE LORD OV SHADOWS』
  • KIRARA 『Sarah』
  • Asian Chairshot 『IGNITE』
  • SUMIN 『Your Home』
  • BTS 『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』
  • Near East Quartet 『Near East Quartet』

 

 

 

 

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付録

 

勝手に決めてみた 2018年度 BEST KOREAN ALBUMS 50!

 

 

なんでこいつはいつも順位ばっか決めてるんだ?!と思っているそこのあなた!

 

ズバリです。

 

まあ、ただ単に面白くて並べて見ただけですし、自分が聴いたほんのちょっとのプールから全部リストに突っ込んでみた感じです…。上のグラミー賞気取りの記事も、このリストから決めてみたものです。

 

とにかく、K-POPに関心がある方に、「これは聞いてほしい!」リスト50位を発表していきたいと思います。

 

 

50. OH MY GIRL 『Secret Garden』(Pop)

49. ADOY 『LOVE』(Pop)

48. (G)I-DLE 『I am』(Pop)

47. HYUKOH 『24:How to find true love and happiness』(Rock)

46. Galaxy Express 『ELECTRIC JUNGLE』(Punk)

45. Samuel Seo 『UNITY』(R&B)

44. Hwaji 『WASD』(Hip-Hop)

43. Aseul 『ASOBI』(Electronic)

42. Kid Milli 『AI, THE PLAYLIST』(Hip-Hop)

41. jeebanoff 『Panorama』(R&B)

40. JUSTHIS & Paloalto 『4 the Youth』(Hip-Hop)

39. ムン・ジョンフ 『大航海時代』(Pop)

38. JJANGYOU 『KOKI7』(Hip-Hop)

37. Dongyang Gozupa 『Gap』(Crossover)

36. イ・ムンセ 『BETWEEN US』(Pop)

35. Plugged Classic 『Sabai』(Metal)

34. Jvcki Wai 『Enchanted Propaganda』(Hip-Hop)

33. Kiha & The Faces 『mono』(Rock)

32. Moldy 『Internet KID』(Hip-Hop)

31. EGO FUNCTION ERROR 『EGO FUN SHOW』(Rock)

30. 柴雨林 『Jaurim, 10』(Rock)

29. Near East Quartet 『Near East Quartet』(Jazz)

28. Kim Sawol 『Romance』(Folk)

27. Sultan of the Disco 『Aliens』(Funk)

26. YESEO 『Damn Rules』(Electronic)

25. Say Sue Me 『Where We Were Together』(Rock)

24. SHINee 『’The Story Of Light’ Epilogue』(Pop)

23. Hippy was Gypsy 『Language』(R&B)

22. AASSA 『Tres BonBon』(Afro)

21. Hunger Noma 『Weird Tales』(Hip-Hop)

20. BTS 『LOVE YOURSELF 轉 ’Tear’』(Pop)

19. Park Jiha 『Philos』(Traditional)

18. Kim Hae Won 『Sea and Myself』(Folk)

17. Jang Pil Soon 『soony eight : so gil hwa』(Folk)

16. SUMIN 『Your Home』(R&B)

15. Lee Jin Ah 『Jinah Restaurent Full Course』(Pop)

14. FANA 『FANAbyss』(Hip-Hop)

13. Dongchan 『Fog』(Electronic)

12. Bassagong 『TANG-A』(Hip-Hop)

11. Jclef 『flaw, flaw』(R&B)

10. Hippy was Gypsy 『Empty Hands』(R&B)

09. Jungsu Choi Tiny Orkester 『Tschuss Jazz Era』(Jazz)

08. Decadent 『Decadent』(Rock)

07. Naul 『Sound Doctrine』(R&B)

06. Byul.org 『Nobody’s Gold』(Experimental)

05. Asian Chairshot 『IGNITE』(Rock)

04. KIRARA 『Sarah』(Electronic)

03. Dark Mirror Ov Tragedy 『THE LORD OV SHADOWS』(Metal)

02. XXX 『LANGUAGE』(Hip-Hop)

01. 空中泥棒 『Crumbling』(Folk)

 

 

50位リストのアルバムから一曲ずつ選んで作ったアップルミュージックのプレイリストです。

https://itunes.apple.com/jp/playlist/2018-best-korean-albums-50/pl.u-55D6Zq6u8l5e9o9

きわめて主観的な 2018年 ベスト 韓国ヒップホップ・トラック 50

お久しぶりです。来年徴兵予定の韓国留学生です。前回書いた2018上半期韓国ヒップホップトラック記事が反応が良かったとのことで、(別によくなくても書くつもりでしたが、)今度もさっさと今年全体の決算をしていきたいと思います。

勝手に聴いて勝手に選んで勝手に並べる今年度の韓国ヒップホップシーンの注目すべきトラック、今度はなんと50曲をいっせいに紹介!ところどころに特別企画「スペシャル・アワーズ:ひとりGRAMMY」もよろしく!(説明を省く曲もございますが、それは単純に僕の怠惰と知識不足のせいであり、みんないい曲です。ご了承ください。)

 

選考基準 : 99%の閃きと1%の努力 

 



 

 

50位

SUPERBEE, twlv – hunminjeongeum

Prod. Twlv

「フンミンジョンウム」は、韓国の文字のハングルの創製当時の名前です。本来の題名は「ガナダ」で、日本語で言う「いろは」、英語だと“ABC”みたいなものです。なぜかPlayboi Carti <Magnolia>サンプルの上で、ただただ「ガナダラマバサ!」(日本語だと多分「あかさたなはら!」の感じ)をラップするという、失笑せざるを得ないトラック。「最近の奴らは、なぜ歌に英語を混ぜとるんだ」と言った視線へのちょっとした皮肉です。

 

 

 

49位

Coogie – Coogie

Prod. P#000000

 

 

 

 

 

48位

Lil Cherry – Motorola (feat. Jito Mo)

Prod. sAewoo

 

 

 

 

47位

Balming Tiger – I’m Sick

Prod. No Identity

 

 

 

 

 

46位

Epik High x SEKAI NO OWARI – Sleeping Beauty

Prod. End of the World, Epik High, Rock Mafia

 

日韓の大衆性のあるチームが集まって、ソフトで悲しく美しい曲が出来上がりました。ちなみにEpik Highは、僕をヒップホップの道に、いや、音楽の道に連れ込んでくれたチームです。アニメでできたビデオもすごく美しいので、ぜひご覧を。

 

 

 

 

45位

HAON – NOAH (feat. Jay Park & Hoody)

Prod. GroovyRoom

 

 

 

 

44位

Futuristic Swaver – LONELY

Prod. Laptopboyboy (Futuristic Swaver)

 

現在コリアンアンダーグラウンドトラップシーンの最大のハッスラー、Futuristic Swaver(プロデューサー名Laptopboyboy)の最新アルバム収録曲です。強がりなswaggerと負け犬的劣等感が混じったおかしなキャラが彼なりの大胆なタッチとうまくあった、面白がっこいいトラップソングです。普通に自分が好きで選びました。あと、ビデオの日本語字幕はデタラメですのでご注意。

 

 

 

 

43位

Mild Beats – Grand Tiger Moth (feat. Chaboom)

Prod. Mild Beats

 

 

 

 

42位

Paloalto – Shelter (feat. ZENE THE ZILLA, Sway D, SUPERBEE)

Prod. Lnb

 

ベテランラッパーPaloaltoのサマーシーズンアルバム《Summer Grooves》の収録曲で、いろいろな新人の参加も特徴です。特に、最初のヴァースを担当するZENE THE ZILLAの、ネットのアンダーグラウンド愛好家のニックネームをシャウトアウトしたことで小さい話題にもなりました。

 

 

 

 

41位

BLOO – Downtown Baby

Prod. ROCK IT PRODUCTIONS

 

 

 

 

 

40位

CHANGMO – Holy God

Prod. CHANGMO

 

 

 

 

 

39位

Dakshood – GAME THEORY (feat. Tommy Strate, nafla, The Quiett, Kid Milli, Lil Cherry)

Prod. Dakshood

 

 

 

 

 

38位

Sway D – Color Gang (feat. Young Thugs Club & Woodie Gochild)

Prod. Sway D

 

 

 

 

 

37位

YunB – Clockwork (feat. EK, Khundi Panda)

Prod. YunB

 

ニューヨークから来たシンイングラップ中心のラッパー・プロデューサーYunBの初のフルアルバムに収録された曲です。無限的なトラップビートの上で、三人の新鋭たちが短くともインパクトのあるヴァースを投げ出していく曲です。参加した三人YunB、EK、Khundi Panda全員のこれからのキャリアが楽しみです。

 

 

 

 

36位

Jay Park – SEXY 4 EVA

Prod. Cha Cha Malone

 

韓国のスターJay Parkが、Jay-Zが頭にいるRoc Nationと契約し、初めて出したEP《Ask Bout Me》の収録曲です。「年齢・人種・身体条件を問わずに誰もがセクシーだ」というメッセージのビデオが印象的です。

 

 

 

 

35位

The Quiett – gui gam (feat. ZENE THE ZILLA)

Prod. Eddy Pauer

 

シーンのベテランラッパーThe Quiettのアルバムに参加した嬉しさが新鋭ラッパーZENE THE ZILLAのヴァースとサビで表れます。題名は憧れのモデルを意味する「亀鑑」という言葉の韓国語発音で、The Quiettが自分の憧れだったこと、そしてこれから自分がその憧れになっていくことについて楽しく語る感動的なトラップソングです。Eddy Pauerの可愛くピカピカするトラック、ZENE THE ZILLAの生き生きしたパフォーマンスとThe Quiettの余裕のあるパフォーマンスに注目!

 

 

 

 

34位

B-Free – CITY OF SEOUL

Prod. NoName, freefromseoul(B-Free)

 

以前、BTSを公開的にディスったことがあって、彼のほぼすべての映像は「悪い」表示が多いのですが、韓国ヒップホップで優れたバイブを披露する逸材です。特に彼のトラックメーキング能力がすごいことは、まあ直接聞いていただくとうれしい(笑)。

 

 

 

 

33位

Loopy – Save (feat. Paloalto)

Prod. CODE KUNST

 

独特なムードのラップメーキングを見せるラッパーLoopyと、同じく独特なムードのビートメーキングが特技のCODE KUNSTはラップオーディション番組で同じチームとして活躍し、話題になりました。そのチールなバイブが多くの大衆に好かれています。

 

 

 

 

32位

Ja Mezz – 錬金術 (feat. Dok2, MINO)

Prod. Bangroz

 

 

 

 

31位

Kid Milli – MOMM (feat. JUSTHIS)

Prod. CODE KUNST

 

 

 

 

 

30位

Leesuho – We Make Noise, Not Music (feat. Kid Milli)

Prod. Leesuho, Hipincase

 

Leesuhoは実験性の高いトラックメーキングが特徴のプロデューサー及び映像ディレクターです。予想のつかぬ曲とともに、奇妙でグロテスクな映像も要注意。

 

 

 

 

29位

250 – Rear Window

Prod. 250

 

プロデューサー250のインストゥルメンタル曲です。20世紀、韓国の民衆を躍らせたトロット(日本の演歌に近いジャンル)に現れる独特の情緒を研究しながらダンス音楽に取り入れようとするプロデューサーで、この曲もその研究の中間発表みたいな感じがします。そのバイブの下で写される、悲しい欲情をメタフォしつつも赤裸々に表現した映像もチェック!

 

 

 

 

28位

TakeOne – Bloom

Prod. Pleyn, Dakshood

 

「一人の女性について話したい。顔だけでなく心が一番きれいな、あなたのような女をまた会えるのなら、僕ももう一度息子として生まれたい」

以前の上半期決算の記事でデモ曲として取り上げた曲で、その後完成版が出ました。

 

 

 

 

27位

HAON – Boong-Boong (feat. Sik-K)

Prod. GroovyRoom

 

 

 

 

26位

NO:EL – Parrot (feat. GIRIBOY, Han Yo Han)

Prod. Suwoncityboy

 

現在高校生の現役ラッパーNO:ELに対する評価が高い理由は、これを聴いただけでもすぐにわかると思います。ちなみにこれは、彼の「セカンド」フルアルバムの曲です…。既に完成型に近く、これからの活躍も期待される少年は、この曲で自分をアイドル視して型にハメようとする、また自分を知らずにただただ嫉妬やルーマーの悪口をつぶやく、色々な存在に対して、怒りを爆発させています。Han Yo Hanの気がせいせいするシャウティング・フックも見所です。

 

 

 

 

 

 

 

半分来たところで特別企画…!

 

 

 

 

 

 

スペシャル・アワーズ#1

 

BEST PRODUCER OF 2018

Jflow

 

今年はやたらとプロデューサーたちの活躍が印象的でした。紹介したいプロデューサーたちがいっぱいいる中で悩みましたが、やはり優勝(?)はこの方、ヒップホップチーム“Wavisabiroom”のラッパーでありながら同時にR&B/Soulチーム”Hippy was Gipsy”のプロデューサー、Jflowです。

自然なソースと曲構成で余韻を残し韓国的なムードを作り上げていく、独創性と完成度を同時に担保するプロデューサー。それに、今年だけで“Hippy was Gipsy”のアルバムを二枚と、彼が全曲プロデュースしたラッパーJJANGYOUのアルバムなど、作業量の面でも優位を取り、それらのアルバムすべてがクオリティの高いというすごさ。それらの点を踏まえて、今年を代表するプロデューサーに堂々と勝手に任命しちゃいます(笑)。

 

 

すごく惜しい候補

FRNK:エレトリック・ヒップホップチーム“XXX”のプロデューサーで、たぶん現在韓国ヒップホッププロデューサーの中で一番すばらしいビート・パフォーマンスを見せる人。

 

その他の候補群

GIRIBOY, Coa white, Code Kunst, Dakshood, IOAH, Eddy Pauer,Leesuho, Laptopboyboy, HD Beatz, Nerdy coke, etc…

 

 

 

 

 

 

 

 

25位

pH-1, Kid Milli, Loopy – Good Day (feat. Paloalto)

Prod. CODE KUNST

ラップオーディション番組『SMTM』シーズン7の一番の人気曲です。余裕のある独特なバイブを持ったCODE KUNSTのビート、Paloaltoのサビ、参加陣の話題性と優れたパフォーマンスなどが大衆の心を刺激しました。

 

 

 

 

24位

areyouchildish (OLNL X Cosmic Boy) – merry go round

Prod. Cosmic Boy

 

独特なトーンで子供感性の爽やかなシンイングラップが特徴のOLNLと、彼とよく合作するフューチャーベース専門のプロデューサーCosmic Boyのプロジェクトチーム『areyouchildish』のリードシングルです。言い訳をしながら子供たちを同じところで回してだます大人たちを「メリーゴーラウンド」に比喩したのが特徴です。

 

 

 

 

23位

Jay Park – Finish Line (feat. Jvcki Wai, SUPERBEE)

Prod. Cha Cha Malone

 

 

 

 

22位

OLNL – SWEET (feat. Samuel Seo)

Prod. dnss

 

彼の音色は聞いたらすぐわかるくらい独特なシンイングラッパーです。そして、主な音楽のテーマは「子供の視線から見た世界」です。〈SWEET〉という題名をつけて最初のヴァースに出てくる「飴を食べすぎて歯が痛いよ」という歌詞を聴いたとき、感嘆しました。あと、フィーチャリングのSamuel Seoも本当に独創的で優れたHip-Hop/R&B歌手・プロデューサーです。

 

 

 

 

21位

SUPERBEE – SUPERBEEWHY (feat. BewhY)

Prod. Truthislonely (BewhY), CHANGMO

 

ラップオーディション番組『SMTM』シーズン7の参加者SUPERBEEと、シーズン5の優勝者でレジェンドになっているBewhYの曲。二人とも華やかなラップスキルで注目されたのですが、特にこれを持ってBewhYは、彼のプロデューシング能力も再評価されそうです。圧倒的なラップ、そのバックにもっと圧倒的なプロダクションを、ぜひ楽しみなされ。

 

 

 

 

20位

JUSTHIS & Paloalto – Switch

Prod. Yosi

 

若いインディペンデントアーティストのJUSTHIS(現在はIndigo Musicレーベルに所属してます)と、キャリアを積んだベテランラッパーでありながらHI-LITEレーベル代表のPaloaltoが、各自の立場や視線、その立場のせいで混乱する状況について、優れたラップで語り合う曲です。

 

 

 

 

19位

Swings – Shit Is Real (feat. The Quiett, GIRIBOY, Kid Milli)

Prod. IOAH

 

意外と象徴的な曲です。「ヒップホップをアップグレードさせてきた者が、今度は自分をアップグレードさせる」というテーマで発売されたアルバム《Upgrade III》で、今までの仲間、これからの仲間とともに勝利を宣言するトラックです。新鋭プロデューサーIOAHのマイルドなビートの上で、ベテランの勝利の証明と、新鋭の野望あるヴァースを聴いてみてください。特にKid Milliのヴァースが伝説並みということもあって持ってきました。Swingsの「ヒップホップだけじゃなく文化を変えたさ」の歌詞が印象的です。誇張じゃなく、リアルなので。

 

 

 

 

18位

JUSTHIS, Kid Milli, Young B, NO:EL – IndiGO

Prod. BRLLNT

 

去年新生のレーベルで、今年最大の成果を出しているIndigo Musicのコンピレーションアルバム収録曲です。4人のエネルギーとスキルの詰まったロウさが特徴で、徐々に話題になって、アイドルポップやバラードが主のチャートでどんどん順位が上がっている恐ろしい曲でもあります。すでに名盤を出したJUSTHIS、今年最高の活動量を見せるKid Milli、高校生とは思えない実力のNO:ELとYoung B(こっちは今年卒業)まで集まった、存在がチートな曲だとも謳われます。

 

 

 

 

17位

Moldy – GodDy

Prod. Black AC

オルタナティブヒップホップを目指すラッパーMoldyの注目のEP《Internet KID》の収録曲です。テクノロジー・ネイティブ世代にふさわしい代案的なswaggerを求め、本能的なラッピングが一番人工的な題名の下で披露されるという、いろいろな解釈の余地のある曲です。というか、普通にラップもビートもすごいです。

 

 

 

 

16位

Keith Ape – The Ice Ape (feat. Chief Keef)

Prod. Oogie mane

 

〈It G Ma〉から三年。ついに出たKeith Apeのアルバム…!混迷で紛らわしく、呪術的にまで感じるこのローファイ・ハードコア・ヒップホップは韓国でも前例がない、注目すべき一作です。それにフィーチャリングがあのChief Keefだよ?マンブルの始祖、Chief Keefなんだよ?!

 

 

 

 

15位

Drunken Tiger – Timeless (feat. RM of BTS)

Prod. Loptimist

 

Drunken Tigerについて申しますと、まさに韓国ヒップホップの始祖となる方。今回がこの名義で出す最後のアルバムになるといい、プロデューサーLoptomistのオールドでハイクォリティなトラックとともにカムバックしました。そこに、今、劇的に浮上中のアイドルBTSのラッパーの参加は結構象徴的です。20年もの昔、アメリカからヒップホップを持ち込んできたDrunken Tigerと、現在、その産物の上で生まれたポップを再輸出しているBTSの出会い。色々と象徴の詰まっていて、(BTSのファンダム力ではあるものの)米iTunesヒップホップチャートで1位を取ったりすることも。

 

 

 

 

14位

Hwaji – NAPPE

Prod. Young Soul, O’NUT

自ら「現代ヒッピー」と名乗る、韓国トップレベルのリリシスト、Hwajiは、新しいEP《WASD》で、シーンをゲームに比喩して、論争や二分法に巻き込まれずただ状況を見守る観照的な態度を取ります。どれだけメッセージが詰まっても、説教的ではなく、むしろファンキーでレイバックされたグルーびーなビートのおかげで、本当にゲームをするように楽しみながら聞けます。

 

 

 

 

13位

GIRIBOY, Swings, Kid Milli, NO:EL – flex

Prod. GIRIBOY

YouTube音楽コンテンツDingoとレーベルIndigo Musicの合作で、フレッシュでキャッチ―なサビとビート、ラップが特徴の楽しい曲です。チャートの1桁順位まで上がったことで、インターネットコンテンツの威力を実感させつつ、「服」「ファッション」について語るユニークな中毒性のある曲です。最初は「なんだこのうざい曲は」と思ってましたが、この記事書く途中ではまっちゃいました。

 

 

 

 

 

12位

Dakshood – Money Man (feat. Ja Mezz, Hash Swan, Bill Stax)

Prod. Dakshood

 

プロデューサーDakshoodは古典的なサンプリング技法でトレンディーなトラップナンバーまでも作ってしまう、非常に優れたプロデューサーです。そんな彼の堅固で可変的な、中毒性のある素晴らしいプロダクションに、よく協業しあうラッパーJa Mezzのさらに中毒的なサビ、Hash Swanの独特なトーンと自由に流れるフロー、ベテランラッパーBill Stax(旧VASCO)のトラップフローなどが合わさって、素晴らしい完成度のMoney Swagを作り上げました。

 

 

 

 

11位

BewhY & Crush – 0-100

Prod. Truthislonely(BewhY), Crush

 

オーディション番組で優勝し、スターになっていってるラッパーBewhYと、既にチャートキラーのヒップホップ・R&B歌手Crushがとある音楽放送で発表した曲です。なんと、トラップのビートに、「クリスチャンの信仰」をテーマを持って、(先のBewhY参加曲でも言った表現ですが)圧倒的なプロダクションとパフォーマンスを披露します。勇壮で大胆な演奏と、リミッターのないラップの協演を楽しみなされ。

 

 

 

 

 

 

ベスト10を残してまたまた特別企画

 

 

 

 

スペシャル・アワーズ#2

BEST NEW ARTIST OF 2018

Jclef

 

色々とユニークな新人が現れた年でもありましたが、その中で一番刮目してみるべき人物は、抜群の完成度を見せたデビューアルバム《flaw,flaw》の主人公、ラッパー及びシンガーソングライターのJclefでしょう。マイルドで安定感のあるボーカル・ラップのパフォーマンスと、その中で鋭い通札力を見せる歌詞、それをアルバムとして積み上げる能力はほぼベテランに準するほどです。

ヒップホップ、R&B、そしてフューチャーベースのバウンダリーまでも自然に乗り越え、彼女自身の音楽世界を早くも確立した、新たな吟遊詩人。

 

 

すごく惜しい候補

Uneducated Kid:ギミック中心のトラップミュージックが生み出してしまった怪人…。名前のごとく何も考えずただただF L E X I N ‘を歌う彼の馬鹿らしく中毒性のある異様なパフォーマンスをご覧あれ。

 

その他の候補群

ZENE THE ZILLA, Leesuho, Coa white, Paul Blanco, Leellamarz, BRADYSTREET, etc…

 

 

 

 

 

 

10位

JJANGYOU – NABI

Prod. Jflow

 

ラッパーJJANGYOUはチーム『Wavisabiroom』などでエネルギーが充満した感覚的でユニークなラップをする人です。曲のプロデューサーJflowは、同じく『Wavisabiroom』ではラッパーとして、そしてアジアンオルタナティブR&Bチーム『Hippy was Gipsy』でプロデューサーを務める人です。この曲が収録したJJANGYOUのセカンドアルバム《KOKI7》は、余韻を残して落ち着いたプロダクションが特徴のJflowと、エネルギーの詰まったJJANGYOUが、奇妙にうまく混じった優れた一作です。幼いころ家を出た母に対する愛憎をぶつけた、ユニークで美しい思慕曲です。ラッパーとプロデューサーの正反対の特徴がどちらも生かされたのが素晴らしいです。

 

 

 

 

9位

Uneducated Kid – Homeschooling

Prod. Eddy Pauer

 

独歩的なギミックを持つUneducated Kidの衝撃のデビュー曲。2分前後の短いタイムに、爽やかなメロディーと、それとミスマッチする、本土のバカげたトラップソングをそのまま翻訳したような歌詞など、衝撃を免れない登場でした。コピーキャット問題を逆手にとって自分のアイデンティティとした会心の一撃であり、本当に注目すべき今年の新鮮な発見。言いたいことはいろいろありますが、何よりも、ピンクのランドセル背負って明るい声で「昨夜俺は銃口を向けたぜ」とか言うんじゃねぇよ!

 

 

 

 

8位

Kid Milli – WHY DO FUCKBOIS HANG OUT ON THE NET

Prod. Leesuho

 

上半期の記事でも結構高い順位で紹介した曲ですが、僕が考える以上にこの曲が持つ意味はすごいです。本当に、韓国ヒップホップシーンのニュー・キングの到来を意味する、そのプロダクションからラッピングのスタイルまで真新しいルーキーの登場を知らせた曲なのです。今、実際に彼のファッションをまねるヒップスターたちも増えるなど、その影響力の根源として、この曲があったと言えます。

 

 

 

 

7位

Jclef – Before an Hour of Collapse

Prod. Coa white

素晴らしい作品《flaw, flaw》で突然現れた女性ラッパー・シンガーソングライターのJclefは、何よりもその安定的で余裕のあるパフォーマンス、深層的な歌詞でどんどん注目を浴びている新鋭です。この曲では〈地球滅亡一時間前〉という題材を用いて、内面の欠点をそのまま直視し受け入れる過程を淡々と描いています。

 

 

 

 

6位

Bassagong – HBD

Prod. Sultan of The Disco

「船乗り」という意味の名を持つ、レトロ感充満なラッパー「ベッサゴン」のセカンドアルバム《TANG-A》(「蕩児」という意味です)は、70-80年代韓国のサイキデリックロックサウンドをヒップホップの文法に合わせて作ったプロダクション、その上で貧しい音楽人の浪漫をウイットよく、時には正直に語る名作です。この曲では、やっと咲き始めたような状況を「ハッピーバースデー」と祝います。この祝いが続くことを願うばかりです。

ちなみに、この曲をプロデュースしたSultan Of The Discoは、レトロ・ブラックミュージックを基盤にしたユニークで優れたバンドです。こちらも最近アルバムが出て、逆にベッサゴンがフィーチャーリングした曲があるので、ぜひご必聴を…

 

 

 

 

 

 

5位

Jvcki Wai – Enchanted Propaganda

Prod. Eddy Pauer

 

新鋭女性ラッパーJvcki Waiの初のフルアルバムでは、彼女のアナーキスト・コンセプトがもっと進化しました。韓国第一のオートチューン使いで、その優れたローファイなプロダクションも誇るべきですが、彼女の語る世界観は想像を超えます。彼女の「プロパガンダ」に発揮されるものであり、その戦争の対象は現代社会のシステム、つまり資本主義の転覆を歌うという、恐ろしいテーマを持った、恐ろしく新鮮で、恐ろしい完成度のトラックです。

 

 

 

 

 

4位

E SENS – MTLA (feat. Masta Wu)

Prod. Decap, 250, FRNK

 

2015年、「韓国音楽史名盤100選」にも選ばれた傑作《The Anecdote》を収監中に出したE SENSが、今年ようやく新しいアルバムを出すそうです。今回出た余裕で少し寂しく聞こえるリードシングルは、ミニマルなエレクトロヒップホップの上で、韓国の資本主義に対する疑問を個人の視点で叙述して「LAへ去りたい。しかし去れない」と矛盾を見せる歌詞など、素晴らしいです。今後のアルバムがどのように展開され、この曲がどんな役割をするか、楽しみにしています。誇るべきラッパーでリリシストのE SENSは、アイロニックにもアメリカから入国禁止されているらしいです。

 

 

 

 

 

3位

FANA – Guiding Star

Prod. G-Slow

 

ラッパーFANAを一言で定義するならば、「ライム・モンスター」です。歌詞に韻を詰め合わせる能力はだれにも負けないワントップ。そして、シーンを掌握していくメディアに逆らい、自らの働きも見せたアーティスト。しかし、今年出たアルバムの題材は、パニック障害の闘病記でした。その障害に陥った状況を強迫的なライミングで、闇に包まれた歌詞と声で苦しく語ります。その中でこの曲は、そんな絶望の中で自分を導いてくれる星を求める、切迫だからこそ美しい曲です。

この曲が重要なもう一つの理由。元々これは彼のライブ専用曲でした。それが今更、「あまり残っていないライブファンの許可を得て出した」という寂しい背景、それでも彼の状況とぴったり合う、いろいろと意味のある曲です。

 

 

 

 

 

2位

XXX – Ganju Gok

Prod. FRNK、Echae Kang

エレトリックを基盤にした、ラッパーKim XimyaとプロデューサーFRNKで結成されたデュオXXX。FRNKのトラックメーキング能力はまさに世界に誇れるユニークさと完成度を保ち、その上でパフォーマンスするKim Ximyaのラップもトップレベルを占めています。彼らの最近出したアルバムはまさに革命的であり、特にこの曲のビートは今年の韓国ヒップホップで最高のビート・パフォーマンスを誇るであろうと自負します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに1位発表…!

 

 

 

 

 

 

 

…の前に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スペシャル・アワーズ#3

BEST HIP-HOP ARTIST OF 2018

Kid Milli

 

はっきり言えます。「今年は彼の年だ!」と。独特なリズム感と皮肉な歌詞、トレンドの先を走るビートチョイスとファッションセンス。今年だけで3つの個人アルバムとレーベルのコンピレーションアルバム、数えきれないくらい大量のフィーチャーリング…。それに、ラップオーディション番組《Show Me The Money》に参加し3位を収めるなど、本当に爆発的な作業量とインパクトを見せました。去年やっとハイプを受けてから一年たたずでこのユニークさと実力、波及力はめっちゃ半端ないって。

 

 

 

すごく惜しい候補

Hippy was Gipsy:「アジアンオルタナティブ」というジャンル自体を開拓し、今年も良質のアルバムを二枚も出した、プロデューサーJflowとボーカリストSepで構成されたR&Bチーム。なぜ選べなかったかというと、ジャンルがヒップホップじゃないから…。(むしろなぜ選ぼうとしたかというと、ブラックミュージックだし、二人ともほかのところではラッパーをしていることもあって…。)

 

 

その他の候補群

どう考えてみても Kid Milliの存在感が強力すぎて、候補すらまとまらず…

まあ、それでも、名盤を出したXXXやBassagong、FANA、そしてアメリカ進出という快挙を果たしたJay ParkやKeith Apeなどをあげれると思います!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃあ、ついに1位発表…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1位

XXX – Sujak

Prod. FRNK

上位2曲を全部XXXにあげたのは単に僕がファンであるから…じゃないと堂々と言えるのがうれしい(笑)。ヒップホップよりエレトリックを基盤にしたサウンドソースをいっぱい取り入れてばらまけても安定感のあるビートメーキングに、その上で彼らの望む芸術と現実の乖離をすごく冷たい視線で歌うKim Ximyaの印象的なラップまで。そしてまた、そのラップのソースを使っていろいろな実験を行うことで、ジャンルのバウンダリーはもちろん、芸術における「形式」と「内容」の境界線までもこれで破ってしまった一作です。厭世的な歌詞と、疾走するビートがうまく合わさった、今年のヒップホップ最高の名曲です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、これで終わりじゃないぞ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

0位⁈

Mommy Son – Shonen Jump (feat. Bae Ki Sung)

Prod. Ye-Yo!

 

現在炎上中のネタ。この炎上の原因を挙げるともう複雑すぎるので、ざっくりだけ言っておくと、最近劣れ気味の人気ラッパーMad Clown「と推測される者(ココ大事)」がオーディション番組に「覆面」を被って登場したが派手に脱落し、その数日後に発表された、「悪党ども(審査委員陣)が俺を落とそうと、少年ジャンプの主人公のように立ち上がるぞ!」というメッセージを含んだ、現在最大の話題曲。よし、一文章で収めたぞ。(なぜか日本語字幕も支援します…)

ミームだらけのギャグソングとして捉えられますが、面白くつぶやいているアーティスト自身やシステムの矛盾性など、いろいろと解釈すべき価値を持ち、そこに多くの大衆が共感したという、今年を代表する断然なる一曲です。

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに終わりです。

読んでくれた皆さん、書いた俺、みんなお疲れさまでした…

 

 

 

その後も調子乗りすぎ兵役対象者の韓国留学生による

《2018 BEST KOREAN ALBUMS》

《近10年間、韓国大衆音楽で聴くべきアルバム》

などなどの記事… (maybe?) Coming Soon!

 

【特別対談企画】学生アーティストたちの「ことば」

 

 

 こんにちは!前回アップした《【特別対談企画】プロローグ・WMS.4出演の学生アーティストを紹介》はもう読んでいただけましたでしょうか。今回はいよいよ本編!ということで、9月中旬に敢行した、Grace Cathedral Park、マイティマウンテンズ、YOTOWNの3バンドの対談を公開いたします。

 

WMS.4のサブテーマである、アーティストたちの「ことば」。ライブや音源だけでは知ることができないような、彼らの「ことば」に対する考え方について存分に語っていただきました。

 

それでは、早速どうぞ!

 

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◯声と歌詞の相関関係

・全員でうみだす”歌詞”という音

―ボーカルもサウンドも三者三様で、それぞれのバンドの中で声と歌詞の関係がすごくマッチしているなという印象を受けたのですが、曲作りに関して声の特徴などを意識しているんでしょうか。歌詞と声が合うような曲作りを意識的にされているんでしょうか。

 

鈴木(YOTOWN / Vo.):結構僕は歌の途中で勝手にスキャットを入れたりするんですが、言葉にはなってないけど、音として聞いた時に体を揺らしたくなるような、声も楽器、みたいな感覚は常に大事にしています。言葉についても、例えば「雨の女神様」っていう曲とかは、最初のAメロではカ行が多いんですよ。それでカッカッカッカていうリズミカルな雰囲気を出して引き込むように意識しています。で、サビになった瞬間に「踊ろうよ〜」ていう母音のオが多く入る歌詞にすることでのっぺり感を出すみたいな。まあこれは後付けというかだんだん演奏する中で気付いてったことでもあるんですが。

 

―無意識に書いてるってことですか?歌詞を。

 

鎌田(YOTOWN / Dr.):いや、意識的ですね。作詞作曲のクレジットをYOTOWNにしているんですけど、なるべくバンド全員で歌詞を書くようにしていて。それは客観性を持たせつつ、全員が違和感なく演奏できるような歌詞にするためなんです。そういう意味でボーカルの(鈴木)葉平さんが自分自身だとわからないようなキャラクターとか、旨味みたいなのを俺らメンバーがキャッチしてそれにマッチするような言葉を当てはめたりしてます。さっき洋平さんが言った「雨の女神様」は、歌詞は半分葉平さんで、それをメンバー全員が添削会みたいな感じにして作りました。

 

 

 

鈴木:僕が歌詞をポンって投げて、それを「これってどういうこと?」みたいに会議するんですよ。それでお互いのイメージしてる世界観を一つにして、一個のストーリーにするみたいな。

 

YOTOWN一同:やったね()

 

清水:で、そっから添削会。こっちの言い回しはこっちにした方がいい、みたいな。

 

―それは他のメンバーさんが 鈴木さんの歌声を念頭に置いて?

 

鎌田:そうですね、葉平さんは言葉の聴かせ方が上手なので。

 

鈴木:もう単純に歌詞としてよりいいものとか、歌詞が音として聞こえた時によりいい響きになるように、みんなが咀嚼して一番いい形として出してくれてるって感じですね。

 

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「自分で表現したかったものだけに沿って歌詞もつけちゃうと多分独りよがりなものになっちゃうかな」

―ではGrace Cathedral Parkさんはどんな感じですか。乾さん(Grace Cathedral Park/Vo.)が作詞で、作曲は安藤さん(同/Gt.)とクレジットされていますが、メロディはどちらが作られてるんですか。

 

安藤:はい。

 

―そうなんですね、それはやっぱりボーカルの乾さんの声を意識して、作られてるんでしょうか。

 

安藤:そうですね。でも、曲作りの段階では本当にメロディだけで。歌詞の内容とかも考えてなくって。逆に歌詞とメロディを分担することで作ってた時のイメージと違うような歌詞をつけられることはあって。そうすると曲を客観的に見ると違う一面があるんだって思うことはありますね。

 

―先に曲ができて、そのデモを乾さんにお聞かせして、歌詞がつくって感じですか。イメージの共有の過程とかはされるんですか?

 

:あんまりないです。でも仮タイトルみたいのがついてる時はあって。その時はそれを見て、こういうイメージにしたいのかな、って推測はするんですけど。好きなように書いてます。

 

―そこはあえて、純粋に曲だけから、感じたことをそのまま書くという。

 

:そうですね。

 

安藤:イメージを固めすぎると主観的になりすぎちゃって、自分ではこういうものを表現したつもりでもやっぱり周りからみるとそうではなかったりするから。自分で表現したかったものだけに沿って歌詞もつけちゃうと多分独りよがりなものになっちゃうかなと。

 

:でもイメージと違うものを書いたら申し訳ないなっていう気持ちは常にあります(笑)。

 

―「これは違くない?」ってなったことはありますか。

 

安藤:違うけど、こっちの方がいいな、みたいになりますね。

 

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「僕が曲作っても作らなくても誰も困らないじゃないですか、世の中。」

 

―なるほど。マイティマウンテンズさんはいかがですか。

 

奥(マイティマウンテンズ/ Vo.):なんでしたっけ…。

 

―声と歌詞の関係についてですね(笑)。奥さんが作詞作曲されてるんですよね。

 

: そうです。全部自分だから、自分しか歌わない曲だし。自分の声も歌い方とかもよくわかんないんで特に考えてないですね。

 

―そのまま、思うままにって感じですか。歌詞についてバンドの他のメンバーの方でどうこうみたいなのは特にないですかね。

 

遠藤(マイティマウンテンズ/ Gt.):うん…。なんか、いいですね(笑)。

 

:曲作り的なこと言うと、僕がギターで弾き語り的なかんじで曲を作るんですけど、他のパートは、それぞれのメンバーが自分で考えているので。基本的に勝手に分業でやってますね。

 

清水:あ、一個聞いてもいいですか?奥さんはギターとボーカルをされてるんですよね。僕、もう一個バンドやってるんですけど、それはギターの子が全部曲を作っちゃってボーカルは全然歌詞には関わってないっていう感じなんです。ボーカルの方が自分で曲を作る時って、自分のキャラ付けみたいなことをするのかなっていうのがすごく気になるんです。自分をプロデュースした自分を出すのか、それとも初めからある自分らしさだけで曲を作るのか。

 

:僕、バンドはこれが初めてみたいなもんだから、あんまり他のとこはよくわかんないんですけど。曲を作るのは、世間に対して自分を主張したいとか、何かを伝えたいってことはなくて、バンド凄いカッコ良かったから、やってみたいと思って。曲がないとできないから作るんですけど、まあ僕が曲作っても作らなくても誰も困らないじゃないですか世の中。だから、自分が楽しいとかかっこいいぞって思えなかったらやる意味ないから。かっこいいと思えるんだったら、別に人がどう思うかわかんないけどいいや、くらいに思いますけど。

 

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◯影響を受けたもの達とどのように付き合ってゆくか

 ・みんなの好きなものがブレンドしてYOTOWNらしさができる

―では次は、影響を受けたものとの付き合い方についてお聞きしたいです。自分が影響を受けたものとどう付き合ってゆくかって、たぶん音楽だけに限らず、ものづくりをする上でどうしても課題になってくるものだと思います。みなさんは音楽活動をしていく上で、それらとどのような距離感で関わっていこうと考えられているのか、お話を聞かせていただきたいのですが。

 

 

 

鈴木:僕らも100%これ!っていうのはあんまり考えないようにしてて。もちろん、これっぽいサウンドとか、こういう音の出し方したいねとか、みんなで参考音源出しあってたりするんですけど、そこから新しい何かを常に掛け合わせるようにしていますね。

 

清水:その結果、曲できる時には全然違う形になっていたりとかすることもよくあるね。

 

鎌田:個々の好きな音楽が違って、その違う好きなアーティストについてもお互い抵抗ないから、上手くブレンドするし、それが自分たちのバンドっぽさになっていると思います。

 

清水:バンドのラインと別に、自分が感動した音楽をただ貼ってくっていうラインがあります。4人とサポートキーボードのオオヤマさん(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)で。感動したものはどんどん共有していくって感じにはしてますね。

 

 

・「わたし」のいない歌詞と風景の異化

Grace Cathedral Parkさんはどうですか?

 

安藤:音楽面に関してはやっぱりアンビエントとかにすごく影響を受けてますね。最近、アンビエントってなんだろうって考えるんですけど、多分それって、「私がいない」ってことだと思うんですよ。どんな人でも、その曲を聴いてそこに没入できるのが重要だと思っていて。で、本人(乾さん)がどういう思いで歌詞を書いてるかはわからないんですけど、客観的に見て思うのは歌詞もやっぱり、「私」ってものが薄いなって。一曲だけ歌詞に「私」っていう言葉が出てくるんですけど、その「私」っていうのも、一つのキャラクターを持った私とか、何か主張したいことがある私じゃなくて、匿名性のある「私」というか、そういうのだと思っていて。それが曲と合ってるのかなと思いますね。

 

 

あともう一個、曲作りの時に考えてるのが、ありのままの日常を写すんじゃなくて、何か風景を見ながら聴いた時に、その風景が別のものになるというか、時間がゆっくりになるみたいな。そういう異化作用がアンビエントっていうジャンルの一つの重要な意味だと思っていて。歌詞を見ていてもそういった異化作用みたいなものがあるかなと。例えば、「微熱」っていう曲では最初、「赤の交差点」っていう歌詞なんですけど、赤の交差点ってことは、止まってるじゃないですか。曲調も、始まった瞬間に周りの時間がゆっくりになる感じなんですけど、歌詞の面でも、何か止まった印象みたいなのが入ってくる感じ。

そういう、「私」がいないということと、周りの風景が異化されるというのが、曲の面でも歌詞の面でもあるのかな。それはまあ、特定の誰かに影響を受けてるというわけではなくて、アンビエントの意味っていうのを考えた時にそういうものが自然と生まれてるのかなと思います。

 

 

 

:私はバンドこれが初めてだったんですけど、曲を聴いた時に「あ、私のこと言っちゃダメだな」というのは最初に分かって。私がどう思ったとか、これが悲しかったとか。このバンドじゃ「私」って言葉あんまり使わないほうがいいのかなと。はじめに曲をもらった時に何も情報がない状態で集中して聴いて、浮かんできた映像とか、言葉とかをA4の紙にバーって書き出して、そこから組み立てていく、みたいなことをするんですが、そうすると風景の描写が先に来るし、そこに感情はあまりないんですよね。今の安藤くんの話も初めて聞いたんですけど、なんとなく共有できてたかな、よかったって思いました(笑)。

 

―特に共有とかをすることなくここまで成り立ってるのがすごいです…。グレースさんの歌詞って言葉数がすごく少なくて、そこにその言い過ぎない綺麗さがあるなと思っていて。曲自体がフィルターのようなもので聴いている人にそのフィルターそのまま渡されてるような気がします。それが「私」がいない、っていうことなのかなと。

 

:そうですね。歌ってるときとかも、PVみたいなのが私の中にあって。ライブとかは集中するためっていうのもあるんですけど、その映像を思い浮かべてたりしてますね。

 

清水:その映像って、作詞をする段階で出来上がっているんですか。

 

:いや、練習していくにつれて…。

 

―それはご自身の経験とか思い出から引っ張ってきたものだったりするんですか。

 

:それもあると思います。でも、私の思い出そのままではないですね。

 

―もっと客観化された映像、って感じなんでしょうか?

 

:見てる目はあるんですけど、そこに人間がいない感じっていうか。カメラのレンズみたいな。そういう感じですね。

 

 

 

「理由とか脈絡とかは自分でもよくわからない」

―マイティさんはどんな感じですか。影響を受けたものとの付き合い方、という話に戻るんですけど。

 

:曲を作ることへの影響っていう意味で言えば、好きな音楽を聴いたとか、いい映画を見たっていうのもわかりやすくあるし、別にただ駅まで歩いたとか窓開けたとかで感じたこととかの影響もあるんですけど。でも、例えばラブストーリーの映画を見て感動したからラブストーリーの曲ができるわけじゃないじゃないですか。晴れてたから晴れてるっていう曲ができるわけでもないし。内容的に反映はされてるかわかんないですけど、きっかけとしてはいろんなとこから影響は受けてます。

 

鎌田:知らず知らずのうちに取り込まれてるものが出てくるみたいな感じですか?

 

:そうですね、曲の中でもこの行はあの時見たようなことなのかなって思う時はあるんですけど、曲作りにあんまり段階がなくて。ギター持ってて歌を「出す!」みたいな感じなので、そこで完成されたものに関しては、理由とか脈絡とかは自分でもよくわからないです。

 

鈴木:言葉出す時って、さあ作詞するぞ!っていうよりはギターの音とともに言葉が出てくるって感じなんですか?

 

:曲作るぞって言ってやろうとする時もあるんですけど、そういう時は全然できなくて。できる時は、うーん、何がきっかけなんですかね…。例えば曲作りじゃなくても部屋で適当にギター弾いてる時はあるし、それでなんかツルツルでてきた時に、「あっ」って忘れないように書くんですけど。あと何か思いついて、頭で鳴ってるやつを再現しようとしても、楽器の能力的に再現できなくて、結局思ってたのと全然違う曲になっちゃう、とかはあるんですけど、そういう感じです。

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◯歌詞の存在理由

 ・みんなを一つにまとめる”バーベキューの串”

―じゃあ最後、歌詞を何のために書いているかっていうのを聞きたくて。歌詞って、何だと思いますか。歌詞の役割をどういう風に捉えられているのか。そもそも歌詞と演奏を分けて考えられているのか、そうでないのかも含めて。言葉も楽器の一つだ、っていうのもあると思うし。

 

葉平:YOTOWNって、みんなで歌詞を添削しあうというか、みんなで作るっていうバンドなんですけど、みんな妄想するのが好きで、妄想力、みたいなのをよくふざけてやったりしていて。どうでもいいシャレとかを、どんどんストーリー作っていって、膨らます、みたいなのが、ある意味長所かなと思ってるんです。歌詞の部分でいうと、この言葉にはどういう事情があって使われているのかとか、っていう、背景みたいなものを、僕らの中で世界観作りをして、使うようにしています。どうですかね。

 

鎌田:そう思います。演奏対歌詞、っていうような感じだとしたら、俺が思うのは、歌詞はやっぱり司令塔みたいな感じなのかなと思うんですけど。音って、振動だから、それだけで伝わるのもあるし、各々の解釈で、踊ってよ、みたいな、歌詞がない音楽って、そういう感じじゃないですか。でも歌詞って、言葉という、辞書で調べたら、明確な定義があるものを、音楽の中に埋め込むっていうわけだから、こっちだぞ、っていうのを示す、そういう指揮者、司令官みたいな役割なのかな、と思っていて。音楽だけだと、自由すぎてしまうから、人々がみんなでひとつになったりするために必要最低限な不自由さというか、みんなを統合するような作業なのかなって思いますね。

 

音楽だけだと、どういうテンションなのか明確には示されてなくて、まあ各々の踊り方がある。それもすごい素晴らしいんだけど、集まった人たちが、やっぱりこういう感じだよね、って再認識するための、すごく手っ取り早い手段かなと思います。

 

王野:なんか、串みたいなイメージかな。バーベキューの肉と、ピーマンと、みたいにいろいろな要素があって、最終的に、曲の最初から最後までを、一個の完成した形に全部まとめるもの。串。リズム要素としてもそうだし、意味としてもそうだし、世界観的にも、そうなのかなと。

 

 

・言葉で曲を壊さないようにしたい

―ありがとうございます。Graceさんはどのように捉えてらっしゃいますか?

 

:歌詞の役割ですよね…。私結構、安藤くんが作った曲を、どれだけ壊さずに、そこに言葉を入れるか、みたいなのを一番気にしていて。無自覚だったけど、たぶん歌詞で演技をしているんだと思います。「歌詞」は自分とは、全然違うし。Graceのイメージ、みたいなのがあるように思うんですけど、それを絶対に壊したくないから、歌ってるときも、どう立とうかなって考えてます。歌詞もおんなじなんですけど。ぶち壊さないように、極力静かにしとこう、みたいな(笑)。そんな感じです。曲を壊さないようにするのが歌詞かなって。

 

―引っ張るぞっていうよりは、曲でできているイメージを、サポートするというか、補完するくらいの。

 

:やっぱり言葉が入ると、どうしても強くなっちゃうから。安藤くんの曲は特に、そういう感じがあるので。壊さないように。最近は歌詞いらないんじゃない?みたいな話にもなってきていて。もっと言葉未満の、呪文みたいな、よくわからない言語みたいなのも合うんじゃない?みたいな話を最近します。

 

―そもそもアンビエントミュージックって、ポスト・クラシカルだったり、ポスト・ロックだったり、インストっていうか、言葉がないものも多いじゃないですか。だから、声を、結構楽器の一つとして、音をただ重ねるだけっていうような感じで、歌ってらっしゃるのかな、って思っていて。言語じゃない何かを発するとおっしゃってましたけど、シガー・ロスとかもそうじゃないですか。適当に唸っているだけ、みたいな、そういうイメージがあったんですけど、いずれそういうところに行き着くかもしれないと…。

 

:かもしれないですね。

 

―そのなかでも、なんで、いま日本語の歌詞で歌っているのか、っていうのが、逆に不思議というか、いい意味でなんですけど。

 

:でも一曲英語の曲があって。実は。映画の主題歌を書いてください、っていう話で。今までとは違って、映画のストーリーがあって、それも多分映画をどう壊さずに、新しい言葉を載せられるか、というのを意識していたと思います。

 

―それは英語にしろ日本語にしろ変わらず、ですかね。歌詞がメインではなくて。

 

:メインではない気がします。

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・自分が「かっこいい」と思えるかどうか

―マイティさんはどうでしょうか?

 

:僕らはバンドだから、バンドの価値、基準みたいなものは、かっこいいかどうか、じゃないですか。カッコよければオッケーっていう考え、価値観があって。カッコ良さっていうのは人それぞれ違うし、要素としても、コード進行が斬新でかっこいいとか、顔がかっこいいとか、使っている楽器がかっこいいとか、いろんな「かっこいい」があって、そのひとつとしての、歌詞っていうのがあると思うんですけど。

 

曲作るときは、歌詞はすごい大切だと思うんですけど、一方でどうでもいいみたいなことがあって。歌詞が全然良くなくても、紙に書いて、読んだ時に全然なんだこれ?っていうのでもかっこいいものはかっこいいし、詩として成り立っていても、バンドでやったときに、あんまりピンと来なかったりしたらそれはやりたくないから。それこそソウル・ミュージックで言ったら、オーティス・レディングとかのガッタガッタていうのが好きで、意味はなんだか知らないですけど、かっこいい、っていうのがあるから、だから歌詞だけ、歌詞の完成度とか、それを成熟させて高みに行きたいっていうよりは、それをバーンとやったときに、かっこいいと思ったら、いいなっていう。

 

 

―演奏やステージングと対等で、かっこいいの基準に合うかどうかが、ギターの音だったり、ベースラインだったり、と一緒で、歌詞もそのひとつに過ぎないという。

 

:かっこいいと思うのも、自分がバンドとかみたり音楽聴いたりして、かっこいいかどうか、っていうのは、瞬間的にわかることじゃないですか。分析しようと、なんでだろうと考えたら、歌詞がいいからかなとか、楽器の音が好きだからかなっていうのはあるけど、その分析を、自分たちでやる音楽では、あんまりできないし、聴く音楽でも、その分析があってるのかどうかはわからないから。感覚的なかっこいいっていうのを大切にしたいですね。

 

 

 

WMS.4
2018年10月19日(金)
代官山SPACE ODD(http://spaceodd.jp
開場:17:30、開演:18:00
チケット:前売り2500円、当日3000円 +1ドリンク
<出演者>
向井秀徳アコースティック&エレクトリック / Gateballers / YOTOWN /
マイティマウンテンズ / Grace Cathedral Park

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【特別対談企画】プロローグ・WMS.4出演の学生アーティストを紹介

 

こんにちは。3年のりょうけいです。いよいよ僕たちのイベントWMS.4が迫ってまいりました…。今回はイベントに関連して、特別企画・プロローグ編を公開します。

 

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10月19日のWMS.4に、学生アクトとしてGrace Cathedral Park、マイティマウンテンズ 、YOTOWNの3組を呼んだのは、彼らの楽曲、ライブパフォーマンスはもちろんですが、一番は歌詞に強く惹かれたからでした。普段生活していてはなかなか出会えないようなことば、日本語/英語の質感を最大限に生かした節回し、メロディに張り付くフレーズ。ことばは、音づくりとはまた違う表情を曲に与えます。様々な解釈が可能な「音」よりも、「ことば」はよりダイレクトに僕たちの耳に入ってきます。

 

このことばを書いているアーティストたち、それもぼくたちと同世代の学生アーティストたちは、どんなことを考えているのだろう。歌詞は、彼らの中でどのような存在なのだろう。少し大げさですが、そんな疑問が漠然とありました。単純な好奇心もありつつ。

 

ライブはもちろん楽しみです。だけど、ライブ以外にも、アーティストたちを知ってもらう機会を持ちたい!と思いました。

 

そこで僕たちは、WMS.4のサブテーマとして、アーティストたちの「ことば」について取り上げることにしました。ライブや音源だけでは知ることができないような、彼らの「ことば」に対する考え方や、思いを知るひとつのきっかけとなれば幸いです。

 

はじめにこの記事では、3組の学生アーティストそれぞれが持つ歌詞の魅力をお伝えできればと思います。ちなみに紹介している曲はどれも、今年のワセレココンピ『Waseda Music Selection 2018』収録曲です!

各アーティストのsoundcloudなど、URLも挿入しておきます。ぜひ、音源を聴きながら、歌詞を追いながら、読んでいただきたい!そして、この記事を読んで少しでも印象に残ったことばがあれば、それを胸に、ライブに足を運んでいただければ本当に嬉しいです…。

 

 

―Grace Cathedral Park

 

 

深いリバーブの効いたギター・アルペジオに、遠く響く歌声が美しく絡み合う、ポスト・ロック〜アンビエントな曲調。ドラムのいない構成が、楽器の音をより繊細に、はっきりと際立たせている。言葉数少ない歌詞は、浮遊感のあるメロディラインにうまく乗せられていて、構成をがっしりと支えている。

 

夕の音が 重く

この部屋に 積もる

先の火が 揺れて

沈みゆく この街すべてが

 

神様のいない 三月の日々に

大きな呼吸で

消えてゆく 私のすべて

ゆっくりと 溶ける

灰色の煙に なって

 

煙が 夜に

 

(Grace Cathedral Park / 三月の煙 作詞:乾真裕子、作曲:安藤秀満)

 

歌詞の一音一音がゆったりとした響きをもっていて、ヴォーカルの透き通った声がそれをますます引き立てています。正直、歌詞を一読しただけでは、バンドのイメージする情景がわかりづらいのだけれど、そこがGrace Cathedral Parkの魅力です。何度も聴いてやっと、自分なりの景色が思い浮かんだりする。ことばと音を通して、リスナーに新しい視界を与えてくれるようなバンドです。

 

 

 

―マイティマウンテンズ

 

覇気がありつつも、優しい言葉で歌うロックンロール・ナンバーが魅力のマイティマウンテンズ。飾り気のないライヴパフォーマンスは聴く人の心をグイっと鷲掴みにします。ヴォーカルのしゃがれた声がたまらなくかっこいい。

 マイティの歌詞の特徴は、作詞者の主観が包み隠さず表れている歌詞です。ただ感じたこと、見えたことをありのままに言葉にしてメロディに乗せる潔さが、人を惹きつけるのだと思います。

 

 

僕の心の中は誰もいないプールサイドのように静かで

夏の視線を浴びた水面がきらっと光って僕は眩しい

 

水色の夏の空 ガラスの色は何色

 

揺れる電車の窓はさよならが見えるように光だけ透き通す

忘れかけてた事が切り取られて僕の目の前に貼り付く

 

オレンジ色の夕暮れ 涙の色は何色

 

アイスクリームみたい アイスクリームみたい

アイスクリームみたい アイスクリームみたい

放って置かれたら消えちゃいそうな君は まるでアイスクリーム

 

少しばかりの出来事と忘れられない思い出 焼き付いてる

 

アイスクリームみたい アイスクリームみたい

アイスクリームみたい アイスクリームみたい

放って置かれたら消えちゃいそうな君は まるでアイスクリーム

(マイティマウンテンズ/ アイスクリーム 作詞作曲:オクマサハル)

 

 

 

―YOTOWN

 

ソウル〜R&Bの素養を下地にしつつ、それをポップスへと昇華させるYOTOWN。どっしりとしたグルーヴ感のある演奏と、ソウルフルなパートも、優しいバラード調のパートもそつなく歌い分ける圧倒的なヴォーカルの歌唱力には、思わず踊り出してしまいます。

グルーヴィな曲って、演奏以外も、つまりことばもファンキーでグルーヴがないといけないんじゃないか、と思っています。YOTOWNのことばは、その意味でまったく、超ファンキーです。語感について、一番計算しているバンドだと思います。

 

眠れぬ夜見上げながら、耳元を流れるmusic

くちびるつんと尖らせて (Long vacation)

あと何回揺られたら 君は僕と夢に落ちて

すてきな音響かせるの?(Don’t stop music)

 

愛の言葉を聞いて 僕の心を聴いて

 

まどろみの中蘇る 君と僕の秘密のこと

忘れてしまいたくないよ(Don’t forget me)

アルバムももう最後の曲 うたた寝はもうやめにしよう

おやすみシベリア鉄道

 

愛の言葉を聞いて 僕の心を聴いて

 

終わらないOh, what a night.

(YOTOWN / cha cha 作詞作曲:YOTOWN)

 

 YOTOWNの歌詞はメロディにいい意味で粘っこくくっついていて、聴いていてすごく気持ちがいいんです。言葉遊びにも近い要素がありつつ、YOTOWNならではの世界観もきちんと成立していて、聴きごたえがあります。クレジットがYOTOWN表記になっているのも気になりますよね。

 

 

 

明日、本編を公開いたします。

ライブも本当によろしくお願いします!10月19日、代官山でお待ちしてます。

ユーミン配信開始記念!初めてのユーミン-中編-

どうも。3年の高野です。

 

9月24日、ユーミンこと松任谷由実の楽曲全424曲の配信が開始されました。10月8日付オリコン週間デジタルアルバムランキングでは、『日本の恋と、ユーミンと。』が初登場1位を獲得したのを始め、全20作品がTOP100にランクイン。何かと注目されているようです。

 

と言うことで今回も、ユーミン配信開始を記念しまして、ユーミンのオススメのアルバムをご紹介します。

このままユーミンの世界にどっぷりハマってしまいましょう。

 

【中級編】

 

14番目の月(1976年)

14番目の月 

 

活動期間はたったの4年ぽっちですが、何かと伝説の荒井由実時代。その間、4枚の名盤を世に送り出しました。

前回の初級編では1stアルバム『ひこうき雲』をご紹介しました。残るは『MISSLIM』、『COBALT HOUR』、『14番目の月』の3作品なのですが…。

 

つべこべ言わずに全部聴け!!!!!

 

中級者の貴方は、全作聴きましょう(笑)。とは言っても、全作紹介していると、それだけで中級編が終わってしまいそうなので、今日の気分で一番好きなアルバム『14番目の月』を取り上げようと思います。

 

 

荒井由実時代最後のアルバム。1stアルバム『ひこうき雲』は、天才少女の純粋な感性が光輝く、いい意味で初々しい作品でした。しかし『14番目の月』は、デビュー4年目にして既に「ユーミン・ブランド」を確立し、立派なミュージシャンへと成長したユーミンの職人魂が籠もった、技巧的な作品に仕上がっています。

前年、ユーミンがフォークグループのバンバンに提供した「『いちご白書』をもう一度」が大ヒット。続けてユーミン自身も、シングル「あの日にかえりたい」がチャート1位の大ヒットを記録しました。その為、予算的にも余裕があったのか、ストリングスやホーンセクションも充実し、これまで以上に厚みのあるサウンドになっています。

 

ユーミン流ポップスとも言うべき軽快なピアノのイントロから始まるM1「さざ波」と、アップテンポのタイトルチューンM2「14番目の月」で、華々しく幕開けです。

そして、M4の壮大なバラード「朝陽の中で微笑んで」に続くのは、あの伝説の名曲「中央フリーウェイ」!

 

「右に見える競馬場 左はビール工場」というフレーズはあまりにも有名です。元祖ドライブソングということで、ユーミンの代表曲に挙げられる楽曲ですが、個人的に、ユーミンに感謝したいぐらい大好きな曲です!こんな名曲を作ってくれてありがとう…。

ユーミンの歌詞は、情景が思い浮かびやすい、とよく言われます。「中央フリーウェイ」はまさにその筆頭。実は曲が進むにつれ、情景が微妙に変化しているんです。

時間は「黄昏がフロント・グラスを染めて広がる」→「町の灯が やがてまたたきだす」→「この道は まるで滑走路 夜空に続く」と変化し、場所は「調布基地を追い越し」→「右に見える競馬場 左はビール工場」へと変化しています。だけどその変化って、ほんの一瞬なんです。

「中央フリーウェイ」は、東京のスタジオから実家のある八王子へ向かう帰り道を、彼氏の松任谷正隆氏に車で送ってもらっているユーミン自身がモチーフの曲なのですが、だったら、思い切ってゴールの八王子まで曲にしてもよかったじゃないですか。だけどユーミンは、帰り道の中で、最も美しい時間、最も美しい景色、その一瞬の情景を曲にしたかったのだと思います。前編でもご紹介しましたが「永遠の一瞬論(私が勝手に名付けました)」なのでしょう。

また、ユーミンのどの曲にも言えることなのですが、直接的なメッセージ性も皆無なんです。だけど私たちは「中央道って、どんだけ美しいところなんだろう!?」と胸をふくらませるのです(実際大したことはないですがw)。メッセージ性のないことが、ユーミンからのメッセージなのかもしれません。

無駄が一切ない、名曲中の名曲だと思います。中央道を走る際はぜひBGMに。

 

「中央フリーウェイ」と並ぶぐらいの名曲が、『14番目の月』にはもう一曲収録されています。本作のラストを飾る「晩夏(ひとりの季節)」です。

夏の終わりの夕暮れの、あのなんとも言えない哀愁感が伝わってくる楽曲です。歌始まり直前のベース一音と冒頭「ゆく夏に〜」で、もうお察しです。それぐらい、世界観が緻密に作られているのです。

 

空色は水色に

茜は紅に 

(中略) 

藍色は群青に

薄暮は紫に

 

「空色」と「水色」、一体何が違うのでしょう。「茜」と「紅」も。その他の色も。ぜひ検索して、色の違いをご確認していただきたいのですが、ほとんど変わりません。だけどユーミンは、その一瞬の空の変化を見逃しませんでした。さすが、常人にはない感性の持ち主です!

 

 

せっかくなので、残りの2作も超ザックリ紹介しておきます。

 

 MISSLIM『MISSLIM(1974年)』

「やさしさに包まれたなら」「海を見ていた午後」「12月の雨」etc.収録。

「海を見ていた午後」の一節「ソーダ水の中を貨物船がとおる」は永遠に受け継がれる名フレーズ。

 

 

COBALT HOUR『COBALT HOUR (1975年)』

「卒業写真」「ルージュの伝言」「雨のステイション」etc.収録。

既にご存知の「ルージュの伝言」も耳を澄まして聴いてみると、間奏で「あれ?山下達郎じゃん。」と気がつく。ちなみに「ワッワッ!」とやっているのは大貫妙子と吉田美奈子。

 

4作すべてに、ほぼ全員が知っている楽曲が収録されています。すごい!これは全作聴かないとね!ちなみに、シングルヒット曲「あの日にかえりたい」と「翳りゆく部屋」は諸々のベストアルバムに収録されているのでご確認ください。

 

(14番目の月の)オススメの曲

「さざ波」「中央フリーウェイ」「グッド・ラック・アンド・グッドバイ」「晩夏(ひとりの季節)」 

 

 

流線形’80(1978年)

 流線形 '80

 

荒井由実時代の作品なんて、とっくに聴いてるわ!という方、結構いらっしゃると思います。ですが、それで満足していませんか?

 

甘いですよ!!!

 

松任谷由実時代の作品も荒井由実時代に負けず素晴らしいんです!34作もありますが、その中から厳選して3作品ご紹介します。

 

 

時代の一足先を行くユーミン。1980年代を見据えていたのでしょうか。発表は1978年ですが、タイトルは『流線形’80』です。

M1「ロッヂで待つクリスマス」、M3「真冬のサーファー」、M6「キャサリン」、M8「入江の午後3時」などのリゾート(っぽい)ソングも多数収録し、前編でご紹介した『SURF & SNOW(1980年)』のコンセプトの先駆けとも言えそうな作品です。ソースは明確ではないですが、確かSURF & SNOW構想はこの時点で既にあったはず。

 

M2はライブの定番でユーミンの代表曲「埠頭を渡る風」。ホーンセクションやストリングスが華麗に鳴り響き、疾走感のあるラテン・テイストの楽曲です。同年、ニューミュージック系女性シンガーソングライター・八神純子の「みずいろの雨」や、サザンオールスターズのデビュー作「勝手にシンドバッド」がヒット。この時期は、ラテン・テイストの楽曲が流行っていたのか、結構目立ちます。

M3は、「ん?山下達郎の曲か?」と勘違いしてしまうぐらいにタツロー・コーラスをフィーチャーした「真冬のサーファー」。ちなみにギターソロもタツローです。山下達郎は74年『MISSLIM』から79年『OLIVE』まで、レコーディングメンバーとして参加しています。「RIDE ON TIME」の大ヒットが80年ですから、メジャーアーティストの仲間入りする直前まで、裏方で活躍していたことがわかります。

M7は、薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」などの作曲でお馴染み、来生たかおとのデュエット作「Corvett 1954」。

M9はどこまでもセンチメンタルな「かんらん車」です。静かに降る雪と、緩やかに動く観覧車。「静」と「動」の対比が本当に美しい楽曲です。アレンジも素晴らしい。ユーミンはポップな作品を歌っている印象が強いですが、「かんらん車」のように、中島みゆき並みに暗い楽曲が、意外と名曲だったりします。

 

オススメの曲

「埠頭を渡る風」「真冬のサーファー」「かんらん車」

 

 

REINCARNATION(1983年)

 REINCARNATION

 

松任谷姓になってから、荒井由実時代ほどのヒット作に恵まれなかったユーミン(普通にチャートトップ10には入っていますが)。しかし、1981年にシングル「守ってあげたい」が久々に大ヒット。第二次ユーミン・ブームの到来です。

 

そんな勢いに乗ったユーミンが1983年に発表したアルバムが、『REINCARNATION』です。

この頃のユーミン、「化け物」なんです(笑)。1983年で言うと、約10ヶ月後にはフルアルバム『VOYAGER』を発表。職業作家としても活躍していたユーミンは、松田聖子に「秘密の花園」と「瞳はダイヤモンド」を提供、原田知世に「時をかける少女」を提供しています。(東芝EMIの社畜かな。)

 

ユーミンは、時間やSFをテーマにした作品を数多く手がけています。本作『REINCARNATION』はその代表。名のごとく「輪廻転生」をテーマにした作品です。

 

宇宙空間にいるかのようなSEで始まるM1「REINCARNATION」。本作の軸とも言うべき楽曲だけあって、神秘的で壮大な楽曲…、かと思いきや、間奏や終奏でのギターソロが一際目を引く、ロック色の強い楽曲です。そう、本作のテーマは「輪廻転生」だけど、オカルティックな雰囲気は終始ありません。寧ろ、今まで以上にポップでロックテイストの強いアルバムなのです。

カットインで始まるM2「オールマイティー」やM6「ESPER」も、ユーミン流のポップなロックナンバーだし、M4「星空の誘惑」は、「続・埠頭を渡る風」とも言うべき、華やかなサウンドと疾走感のあるアップテンポな楽曲です。

M7「心のまま」もミディアムテンポながら、間奏やアウトロではメロディアスなギターソロがあります。

 

私の見た雲は 馬のかたち

あなた何に見えた

言葉にしてるまにちぎれてゆく

それは愛に似てる

 

ああ、なんて天才なんだ。大好きな歌詞です。

 

しかし、本作では唯一都会的な世界観のあるAOR調のM3「NIGHT WALKER」や、M8「ずっとそばに」、ラストを飾る「経る時」といったバラードも充実しています。とりわけ「経る時」は、ファンの間でも傑作だと名高い一曲。

「経る時」は「ふるとき」と読みます。桜の名所・千鳥ヶ淵沿いにあったホテルから臨む四季の風景を描いた楽曲です。4月ごとに開花する桜。空から舞い散る桜の花びらは、「薄紅の砂時計」の砂の如く、まるで時が「降ってくる」かのよう(だから「経(ふ)る時」なのです。)。このように、一年周期で咲いて散る桜も、一種の「輪廻転生」だと言えます。

歌詞に登場する「寂れたホテル」や「老夫婦」も、いずれは「輪廻転生」します。だけど、桜もホテルも老夫婦も、それぞれの「一生」の長さは違うんです。だから「輪廻転生」の周期もみんなバラバラ。この世界は、様々な時間が交差して成り立っている、ということを暗示する楽曲だと思います。

 

オススメの曲

「NIGHT WALKER」「星空の誘惑」「経る時」

 

 

ダイアモンドダストが消えぬまに(1987年)

 ダイアモンドダストが消えぬまに

 

いよいよバブル突入で、ユーミンの勢いも絶好調。全編にユーミンの楽曲が散りばめられた邦画『私をスキーに連れてって』も公開され、いよいよ第三次・ユーミンブームの到来です。そんな中発表されたアルバムが『ダイアモンドダストが消えぬまに』。本作、次作『Delight Slight Light KISS(1988年)』、次々作『LOVE WARS(1989年)』をあわせて「純愛三部作」と題し、「恋愛の教祖」というポジションを確立させました。当時は、フジテレビのトレンディードラマや、村上春樹の「ノルウェイの森」が大ヒットするなど、純愛ブームだったようです。

 

まさに、バブル期の東京の空気感を封じ込めたかのようなアルバム。例によって、シンセサイザー・シンクラヴィアのサウンドが時代を感じさせますが、このギラギラした華やかな電子サウンドは、ユーミンの漲る自信を体現しているかのようです。「恋愛の教祖」としての貫禄が感じられます。

 

タイプライターを打ちこむSEで始まるM1「月曜日のロボット」。OLの味方ユーミンが、都会で働く女性の月曜病を歌った楽曲です。

続くM2はタイトルチューン「ダイアモンドダストが消えぬまに」。ギターの軽快なカッティングが冴えるポップ・チューン。「シャンパンの泡」と「スキューバーダイビングの泡」を「ダイアモンドダスト」に例えたトリプルミーニング技は、まさに職人芸としか言いようがありません!

M4「SWEET DREAMS」は切ない恋の終わりを歌ったバラード。

 

この電話が最後かもしれない

他人事に思える 涙だけ溢れて

もう切るわと何度も云いながら

ひきのばすのは私の方

 

私たちのコミュニケーションツールはLINEやらTwitterやらのSNSで、時間を問わずいつ・どこでも連絡が取れる時代。しかしバブル当時は「固定電話」が主流です。時代を感じさせるシチュエーションですが、このいじらしさは今でも十分に通用しますね。

M7「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」は、裏番組だった「8時だョ!全員集合」を打ち切りに追い込んだという伝説の番組「オレたちひょうきん族」のエンディング曲。ギロッポンのバーを舞台にしたバブル感満載の一曲です。

ここまで、ピコピコ電子サウンドの目立つ楽曲が続きましたが、ラストを飾る「霧雨で見えない」は、しっとりとした生サウンドで奏でる王道バラード。メロディアスなサキソフォンのソロが美しい。1984年に、ハイ・ファイ・セット他に提供した楽曲です。霧雨の特有の空気感や質感が伝わってきます。

 

ユーミン自身、本作『ダイアモンドダストが消えぬまに』はかなりお気に召しているようで、アルバムが完成した時、自身の才能に感動し、神棚に拝んだとか拝んでいないとか。俗社会にどっぷり浸かった作品ではありますが、軸は一切ブレていません。時代を反映させつつも、十分に普遍さもある非常に完成度の高い作品だと思います。

 

ちなみにCDジャケットは、ピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターなどの渋谷系アーティストのアートワークにも携わった、信藤三雄氏によるもの。帽子を被り、自慢の美脚を見せつける11人のユーミンがズラッと並んだデザインは、ユーミンの勢いと迫力を感じさせます。

 

オススメの曲

「ダイアモンドダストが消えぬまに」「思い出に間にあいたくて」「LATE SUMMER LAKE」「霧雨で見えない」

 

 

前回、中級編と上級編をまとめてご紹介すると予告したのですが、中級編も結局長ったらしくなってしまったので、上級編は次回に回します(笑)。すみません。

中級レベルのアルバムはたくさんあります。80年代のアルバムはほぼ全て中級レベルと言えるでしょう。ですので、上記で紹介した作品以外でも、直感でピン!と来たアルバムがあれば、ぜひ聴いてみてください。

 

(文・ワセレコ3年 高野)


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