80年代、大滝詠一(A LONG VACATION、81年)、山下達郎(FOR YOU、82年)、杏里(Heaven Beach、82年)などの多くのシティ・ポップ系アーティストが、夏のリゾートをテーマにしたアルバムを発表しました。ユーミンも彼らに先駆け、リゾートアルバム『SURF&SNOW』を発表。
バブル期の作品ということで、初っ端のM1「MISS BROADCAST」や、ラップ調のM7「Man In the Moon」はバブリー全開です。「明日からもハイなまま 明日からも波に乗って」って(笑)。当時最高峰のシンセサイザー・シンクラヴィアが奏でる華やかなサウンドも、若干時代を感じてしまいます。しかし全体を通して聴くと、バブル期のような浮かれた曲ばかりではないことに気が付きます。
M6「ホタルと流れ星」やM8「残暑」といった、控え目ながらも荒井姓時代からの変わらぬ王道のバラードもしっかり収録。「残暑」は84年に若手アーティストに提供した楽曲のカバー。日本の夏の情景が思い浮かぶ美しい楽曲です。それにしても、M7「Man In the Moon」からM8「残暑」への流れ、ギャップが激しすぎて好き。
Lil Pumpが踊りそうなビートの上に、なぜかキズナアイちゃんがラップをしている衝撃は、ヒップホップシーンで小さい波乱を起こしました。とあるラッパーはリプライで「科学がすべてのフィメールラッパーに勝った」とつぶやいたり。いや、確かにアイちゃんはスーパーAIだけど、ボカロじゃないんだぞ。そこがすごいんだぞ。ちなみに、筆者自身もすごく驚いて、どうやって作ったのかDMまでして聞いてみましたが、帰ってきた返事は「企業秘密です」と(汗)。
한국사람(*KOREAN) – 거위의모험(*The Adventure of the Goose)
Produced by jayhmez
「韓国人」というラッパーネームからただものではないことが感じられるこの人の音楽を聴くと、アマチュアが低価格のマイクで録音したみたいな曲が流れます。ラップもすごく素人ぽくて、むしろ奇怪です。しかし、その曲の中にこもった負け犬の感情を、何のフィルターもなくそのまま伝えます。1節では、平凡に生きたいという夢を語って、2節では何もできない現実を語る、一見単純な構造でできているこの曲は、聴いていると泣ける何かが伝わります。ひねくれた否定的感情だけを極限にあげて、補正もなく歌うことで、常に競争を求められる韓国の青春の実像を生で見せたかったのでしょうか。ミックステープ『엠창인생(Rape Life / *糞人生)』の最大名曲。ミュージックビデオと一緒に見ることをお勧めします。
Basickの多事多難なキャリアは、意外と今年、やっと光っているのかもしれません。期待されるルーキーから、期待以下のアルバムキャリアと、ラップオーディション番組《Show Me The Money 4》で優勝したが、その後のいい成果が出なかった彼にとって、夢の始まりであり、唯一の武器であった、マイクロフォンを素材にして出した、アルバム《Foundation vol. 4》のリードシングル〈SM58〉は、いつの間にかベテランになったBasickと、ヒップホップシーンを恐ろしいキャリアで支配していく新鋭JUSTHISのコラボだけでも話題になった曲です。復古的なラップの野望を感じたいリスナーにお勧め。
VINXEN – 그대들은어떤기분이신가요(How Do You Feel) (Feat. 우원재(Woo Won Jae))
何の情報も知られていない、本当に何の前触れもなく突然出てきたプロデューサーのリ・スホ。サウンドクラウドに唯一に上がってるこの曲は、アバンギャルドヒップホップグループ《XXX》のスーパールーキーラッパー、Kim Ximyaのフィーチャーリングで知られ、その前衛的なビートで話題になりました。Kid Milliの〈AI〉と〈WHY DO FUCKBOIS HANG OUT ON THE NET〉をプロデュースしたということしか知られていない、いまだにヴェールの中に包まれているこのプロデューサーは、この一曲だけで十分に注目されるべきだと思います。ちなみに、7月3日に彼のデビューアルバムが発売されました。要チェック。
Keith Apeのヒット曲〈It G Ma〉をギターでカバーした映像で話題になったラップ・ボーカルのByung Unをフロントマンとして集まったクルー、Balming Tigerの話題曲の初シングル。インターネット放送のお約束のふざけをパロディしながら死に物狂いで有名になりたい気持ちを表す、面白くて同時に衝撃的なビデオは、本当に彼らの名をどんどん広く知らせています。リストの中で一番面白いミュージックビデオなので、ぜひチェックを。
Simon Dominicは大衆的に有名なラッパーですが、長い間ソロアルバムがないとのことで、批判を超えて、もはや一つの笑いネタとして遊ばされました。そんな中、突然出たこのアルバムには、今までのポップ性を見せたスタイルとは真逆の、暗い自伝的ストーリーが詰まったEPでした。特に、失踪した叔父のことを題材にしたこの曲は発表直後すごい反響を呼びました。個人的に彼独特の華麗なフローが全くないことが残念ですが、その影響自体で上半期の注目すべきトラックとして載せました。ちなみにこの後、叔父に実際再開したともいうので、めでたしめでたし。
上半期の一番の期待作といえば、やはり2016年衝撃的なデビューアルバム《2 MANY HOMES 4 1 KID》で登場した新鋭コンシャスラッパーJUSTHISと、常に淡白でよいバイブの音楽をしてきたベテランPaloaltoの合作アルバム《4 the Youth》だったでしょう。22トラックもあるアルバムの中で、〈Seoul Romance〉は、曲名が出す雰囲気とは真逆に、ソウルで暮らす二人が感じた人生の経験を述べながら、韓国社会の問題点を指摘するトラックです。その問題の捉え方が的確で、堅固なBoom Bapのプロダクション、そしてPaloaltoの重厚なラップとJUSTHISのいかれたラップの調和も素晴らしいです。韓国の知識人ユ・シミンの講演からのサンプリングもまた社会について考えさせます。「強盗に合った夢、生存本能だけか残ったソウル」「韓江の奇跡が浪漫を消したわが親の記憶の上に建ったピラミッド」
数年間続いた韓国ヒップホップシーンの最大論争は、「ヒップホップがマスメディアに侵食されているのか、それとも利用するべき機会なのか」についてです。日本の《フリースタイルダンジョン》のように、韓国でもラップ競演番組《Show Me The Money》が人気です。しかし、そのせいで大衆がヒップホップについてのステレオタイプなイメージを持ってしまい、その番組がパイの拡張より、ただ話題性の高い曲だけが売れる現象を作ってしまいました。そこでヒップホップシーンは「メディア擁護論」と「メディア批判論」で責め合ったり、常にメディアに批判的だったラッパーがいつの間にか言葉を変えてその番組に出るようなこともしばしば起きました。(そのような態度変換を批判した代表的な例が、リスト5番目に紹介したJUSTHISのディス曲です。)
ウェールズのカンフー野郎ことBoys Azoogaのデビュー作。タイトルのインパクトもあってか、今月のUKインディロックシーンは彼らの話題で持ちきりでしたね。ロックンロールの格好良さと、グルーヴィーでダンサブルなお洒落サウンドのバランス感覚が素晴らしいです。3曲目の「Face Behind Her Cigarette」は個人的に好みで一時期狂ったようにヘビロテしてました。この曲だけでも聴いて欲しい、、、
遂に来ました!個人的にいや世界で今一番アツいかもしれないアーティストことOneohtrix Point Neverの新作です。世間の評価を見てると割と賛否両論のようですが、ポップな路線を打ち出したアーティストが批判されるのは世の常でしょう、、、それにポップな路線といってもあくまで「彼にしては」という話であって、特に後半では彼らしい前衛的なトラックもあり、非常に聞き応えのあるアルバムでした。
デンマークのポストパンクバンドの新作です。先日、来日公演も行ってましたね。本作はPitchfork にて「Beyondless sparkles like a champagne bottle smashed in slow motion.」と表現されていたんですが、これ本当に秀逸だと思いません?作品を通して色気と衝動が渦巻いていて、段々と美しくも儚い情景が見えてくるような気がします。Sky Ferreiraの参加もこの作品の世界観に合っていて面白いですよね。バンドとして成熟の時を迎えているのが伝わってきます。来日公演行きたかったな、、、
彼のようなアーティストは最近「Newwave of DIY」なんて呼ばれたりして、ここ最近の勢いがある界隈の一つですよね。代表するアーティストとしてはRex Orange Country とかFrankie Cosmosとかが挙げられます。みんな好きでしょ!!要はDIYbedroompop なんですが、主要なアーティストが僕たちと同世代なこともあり、身近な気がしてついつい聴いてしまいます、、、 要注目です!
Big Fan of the Sesh, Vol.1 – Biig Piig
アイルランド出身の20歳、Jess Smyth によるプロジェクトの1stEP。去年ドロップされたシングル達がハズレなしだったので、個人的に待望のリリースでした。ジャンルとしてはLo-fi bedroom hip-pop~R&Bて感じでしょうか。ありそうでなかった感じです。まぁ、聴いてみてください。先程、「New wave of DIY」について少し書きましたが、そこにジャジーな雰囲気を加えたような彼女のサウンドは、非常に「今」っぽくて面白いですよね。ここ最近、飛ぶ鳥を落とす勢いのレーベル、BlueFlowersの顔であるPuma blueなんかとの絡みもあるらしいし、うまくその辺の波に乗れれば一気にブレイクする可能性も秘めているでしょう。