nemuigirl インタビュー

 

 

 

 

いつもねむいとおーるOKAY!!さん二人による

ワセレコ所属の新進気鋭トラックメイカーユニット、nemuigirl。

音楽のみならず「コラージュ」のようなアーティスティックな展示等、

nemuigirlの活動は多岐にわたる。

先日1stEP”NEON POP”を発表、さらに2ndEPも近日中に発表予定と

耳の早い音楽ファンの間で、文字通り「耳目」を集めている。

しかし、彼女たちを取り上げたラジオ番組でも「謎の二人組」と紹介されるなど

nemuigirlの素性は謎に包まれている。

そんなnemuigirlに今回我々はインタビューを行った。

 

 

音源を普通に出しても自分達のやりたいことはそれだけに収まらない

 

―お二人は我々(Waseda Music Records)のオーディションに出ていらしていましたが、
そもそもWaseda Music Recordsをどうやって知られたんですか

 

おーるOKAY!!さん(以下A):元々サークルの先輩がワセレコのライブに出てて・・・

 

―シーンズとかですか

 

 

いつもねむい(以下I):the Stillとか、マイティマウンテンズとかもですね。

 

 

 

 

私たちが”Bud In The Twilight”というバンドを組んでいて

それのCDをワセレコさんに委託してもらったことがあって。

 

A:一応そこで初めて関係を持ちましたね。

 

 

 

―それでワセレコの存在を知ってくださったんですね。
オーディションの企画についてはTwitterとかですか?

 

 

I:オーディションの話をBud In The Twilightのメールに頂いていて。

その時活動休止を決めていて出演は厳しかったのですが

せっかくお声がけいただいたし、なんか活かしたいな、と思って。

当時はまだnemuigirlはわたしのソロプロジェクトだったんですけど、

彼女にも関わってもらっているし、手伝ってもらった方が楽しいなって思って。

丁度一緒に撮ったプリクラがあったので

それをアー写にして出すっていう(笑)

 

―(笑)

 

I:通ると思ってなかったんです。

 

A:本当にそうです(笑)

 

I:初ライブが渋谷LUSHになるなんて思わなかったですね。

 

―機材トラブルもあったようですが
実際オーディションのライブに出てみてどうでしたか。

 

I:そういう突貫工事的なことをやるのはよくないなと思いましたね・・・

飾っていたネオンサインがあったじゃないですか。

あれあの日の朝作ったんですけど・・・

 

―え!?

上動画でそのネオンサインが確認できる。

 

I:昼にできて「あ!これ飾ったらかわいい!」っていう感じで・・・

 

―僕たちとしては「なんかやり始めたぞ?」という感じで
ビックリさせてもらいました。

 

I:普通にライブやっても、トラックを流している都合上、

どうしても絵面が地味になっちゃうじゃないですか。

最初に実験的に配信みたいなことをやったこともあったんですけど

その時は部屋に色々装飾したり光らせたりして

視覚的に飽きないようにする工夫をしたんです。

ライブハウスになると、ここ(壇上)だけで完結しちゃうな・・・と思って

ミラーボールとかネオンサインとか持ってきました。

 

 

全部「体験」になるように作りたかった

 

―ZINEの話に移りますね。

これは先日出したEP”NEON POP”の。

 

I:フィジカル版でございます。

 

 

―元々音源とZINEを一緒に出すという予定だったんですか。

 

A:そうですね。企画として最初からです。撮影も依頼して。

 

I:音源を普通に出しても自分たちのやりたいことはそれだけに収まらないなと思って。

デジタルリリースが主流になっているので

それだけだと埋もれちゃうな、と思ったのと

元々私がデザインとかの仕事をしていたのもあって

結構「視覚面」のことはできるな、と思ったのでやってみた次第です。

 

―特にこだわったところはどこですか。

 

I:ZINEの中にも書いてあるんですけど、

「なに一つまともな方法で歌詞を載せない」っていうテーマがあって。

このZINEは全部「体験」ができるように作られているので。

私もCDとかで取り込んでおわり、になることが多いんですけど

ライブ中心になって、音源が売れない時代に敢えて音源を出す以上は

何かしら意味のあるものにしたいなって思って。

それで仕掛けを色々考えました。

使うものも、身近なものにしようと思って。

この袋とかも100均で売っているものですけど。

 

 

―確かにそうですね。

 

I:印刷ってお金さえかければ

豪華なものだったり凝ったものだったりを色々作れるんですけど。

 

―見てくれだけは。

 

I:そうそう!美術展のカタログとか「お金かかっているな」と思うものはありますし、

そこはかけるべくしてかけているのだとはおもいますけど

どちらかと言えばアイデア勝負というか、

身近な材料だけれどハッとさせられるような

捻ったものを作りたかったんです。

例えば、ここに切手が入っているのも

「fuyu no hi」っていう曲が手紙みたいなイメージで作った曲だったので。

 

―だから切手なんですね。

 

I:この切手と一緒に入っているQRコードを読み込んで、そのページにメールアドレスを入れると

「fuyu no hi」の歌詞が実際に送られてくるんですよ。

もともとこの曲は手紙みたいなイメージで作ったので、こういう仕組みにしてみました。

 

実際に送られてきたメール。

 

―凝ってますね。

 

I:「rainy secret」は

苦い想い出を美化しようとして作った曲なんですけど、

全体的に浮遊感とか透明感とかを意識して作った曲なので

だから半透明のトレーシングペーパーに載せたりとか。

「From City Girls」をARコンテンツにしているのも

聴いたときにキラキラしたイメージや

街の鮮やかな感じの印象を受けたからです。

紙にしちゃうと彩度が落ちてしまうんですが、

あえて彩度が落ちないデジタルのコンテンツとして出した方が良いなと思って。

 

「From City Girls」でのAR画像。

―スマホで見てもらおうというのはそういうことだったんですね。

 

I:そうですね。

「blank space」は変拍子の曲ということもあって

ポップだけどちょっとうがった面を出そうと思って

歌詞を文字化けさせました。

これをデジタルにしたのは、デジタル媒体じゃないと文字化けが分からないので・・・

 

―印刷だとコピペできないから。

 

I:コピペして変換機とかかけてほしいなって思います。

 

 

―歌詞を簡単に読めないようにするきっかけになったものとかありますか。

 

I:歌詞はあくまで付随物であってほしい部分がありますね。

音楽レビュー読むの結構好きなんですけど、

歌詞について力説しているものがとても多くて。

勿論それもそれで素晴らしいことだと思うし、

そういう受容の形があるのもわかるんですけど、

同じくらい、ノイズになってしまうこともあるんじゃないかと思っていて。

 

あとは昔から文字化けが好きですね。

怪しいサイトとか見るの好きで、

「検索してはいけない言葉Wiki」って昔流行ったじゃないですか。

あとは阿部寛のホームページとか。

 

―通信制限がかかっても一瞬で出るので有名な(笑)

 

I:昔のサイトって文字化けとかしていることも頻繁にあったんですよ。

でも、そういう不便さもある種の魅力があって。

こういうのを生かせないかな?って昔から思っていました。

 

―レトロ・インターネットの感じですね。

 

I:そうですね。

今もFuture Funkが流行ったりとか、Vaporwave系の文化も

レトロ・インターネットを今再構成しているという感じがして。

 

―最近起きているリヴァイヴァルというか。

 

I:そうそう、元々自分が小学校三年生くらいからずっとパソコン触っていて。

親に隠れてマインスイーパやネットゲームで遊んでいたんですけど。

だから世代より前のインターネットになじみがあるのかもしれない。

 

―結構小中学校の時に触れたインターネットが今活かされている感じですか。

 

I:ビジュアル面とかは結構活かせている気がします。

 

A:私は逆にずっとインターネットを見れなかったことへの憧れが強いですね。

私自身、小学校の時とか親にインターネットを見ることを制限されていて

しかも親がいる場所にしかパソコンがなくて。

友達とかがネットゲームやっている話に全然関われなくて。

そういう憧憬をnemuigirlでは再現したいな、って思っています。

いつもねむいは実際を知っているけど、

私は憧れのような思いがあるのかなって思います。

 

I:展示とか見てるとそれは感じるかもしれない。

リアルタイムというよりかは後追いで再構成しているな、と

彼女の展示を見ていて思って。

昔のアニメやゲームを使った展示を彼女がしてたんですけど、

どうしても自分が体感していると文脈で考えちゃうんですよ。

でもそういうバイアスがなくて、面白いなって思いましたね。

 

―実際にインターネットを触れていた人と、
ちょっとしか触れられなかった分それに空想を膨らませた人と。

 

I:海外の人が日本のオタク文化に対して

#animeとハッシュタグをつけるのに似た感じがあります。

 

A:そうそうそう!

海外のアーティストが日本の80年代に思いをはせて、というのに近いと思います。

 

―一部に少し誤解がある感じですね。

 

I:でもその誤解が面白いような。

 

 

「あ、アルバムができるな」と思った。

 

―ありきたりですが、今回のEPで影響を受けたのはどういったものですか。

 

I:美術鑑賞…。

 

A:毎週ギャラリー行ってるもんね。

 

―音楽的にはどういったものですか。

 

A:私特にないんだよなあ(笑)

元々一人で曲を作るときはかわいくするのをメインで作っていたんですが

今回の作品はエモーショナルな感じで作りました。

やっぱり「rainy secret」の印象が強かったからそっちに寄せた!って感じです。

次に出すかわいい系のEPが元々私のやりたかったものに近いのですが、

今回は完全に寄せましたね。

でも、そういう音楽を聴かないわけではなかったし、

Local Visionsや海外のVaporwave系の音源も聴いていたので。

そこに関しては私も好きなものなので

無理に寄せたというよりは、自然と寄っちゃった、みたいな気がします。

 

―いつもねむいさんはどうですか。

 

I:個々にエピソードがありますよ。

でもやっぱり「rainy secret」がキーになってますね。

これ最初ソロで出したんですけど、

サークルの先輩とかがわざわざ連絡くれて褒めていただいて。

それがすっごく嬉しかったし、

実際そのあとにワセレコのオーディションの機会もいただけたので

「rainy secret」を主軸にして作った方が良いな、というのは私の方にもありました。

なので「internet idol」もビートとしては同じパックの素材から作ったりとか。

 

「blank space」は浦上・想起さんの「芸術と治療」の影響が大きいです。

知人がこの曲の構成を解説してくれた時、Aメロが7拍子と8拍子で出来ているって話していて、

ものすごく感動したんです。「こんなにポップで聴きやすいのに、変拍子なんだ」って。

他にも(長谷川)白紙くんとか、ヨシノさん(Yoshino Yoshikawa)の影響とか、いーっぱいある!これは!

 

 

 

 

 

「fuyu no hi」はオーディションのために作った曲です。

オーディションが最終まで残ったのがうれしかったのでシンセサイザーを買ったんですよ。

買ったからには曲作らないと、と思って作った曲がこれです。

 

―それが二人で作った初めての曲ですか。

 

A:そうですね。

 

I:ビートを彼女(おーるOKAY!!さん)が作ってくれました。

オーディションの時は自分で組んだビートだったんですが

「お前違うだろ!」と言われて(笑)。

彼女に渡したら滅茶苦茶良いビートが返ってきたので

「二人でやっていけるな、これ」と確信しましたね。

 

―二人でやっていける自信というか。

 

I:この曲ができたとき、「あ、アルバムができるな」と思いました。

 

 

―Remixについてのエピソードもお聞きしたいです。Tsudio Studioさんにはどういった経
緯でオファーされたんですか?


I:Tsudio StudioさんはLocal Visionsを好きになったきっかけなんです。

去年の7月くらいに、関西の友達が一斉に「Port Island」を絶賛していて。

 

珍しく東京でライブがあるというので遊びに行って、完全に嵌りましたね。

ちょうどそのイベントにhikaru yamadaさんやGimgigamさんが出演されていて、

それでLocal Visionsを追うようになりました。

12月リリースのアルバムも本当に素晴らしくて、特典欲しさに4枚買ったり、完全にオタクですね…(笑)。

だから、まさかオファーして通るとは思っていなくて。

 

A:本当にびっくりしたよね。でも、ダメ元でお願いして良かった!

頂いたRemixがすごい素敵で。


I:「rainy secret」って、浮遊感はあるんですけど、エモーショナルというか、

どちらかと言えば暗い曲だな、っていうイメージがあったんです。

でもそれがうまい具合にツジオサウンドに落とし込まれて、

元々の楽曲らしい浮遊感はそのままに、ポップで鮮やかな作品になっていて、

「こんな解釈の仕方があるんだ!」って衝撃を受けました。

彼の楽曲って歌詞は暗かったり癖が強いものが多い気がするんですけど、サウンド的には爽やかに吹き抜ける青色の風みたいな印象があって。

そういうある種の”救い”みたいな魔法を、自分の音楽にかけてもらえたことが凄く有難かったですね。

 

 

―普通に音楽やっているだけじゃ味わえない体験ですよね。

ツジオさんの新譜を聴くのとはまた違った感じですか。


I:そうですね。聴き馴染んだ好きな要素や音色に混ざって、自分の声が聴こえてくるのが衝撃的で。

わたし、ツジオさんの曲で「Kiss in KIX」が一番好きなんですが、

同曲で使ってる音色が聴こえてテンション上がっちゃいました。

 

 

 

 

「すごい、すごい、ツジオサウンドの中から自分の曲聴こえてくる!なんで!?」みたいな。


A:私もただただ呆然としてしまって。「これはなんだ?これはなんだ?」ってなりましたね。

 

 

栄免さんのRenovation聞いた時もやばかった。

 

I:わかる!データ届いたとき屋内にいたんだけど、思わず外に飛び出しちゃったもん。

 

 

―栄免建設株式会社さんは色んなアーティストのRemixを手掛けてらっしゃいますよね。

どういったきっかけでオファーされたんですか?

 

I:2019年の秋ごろ、CINRA.NETが主催してる「NEW TOWN」というイベントで、

パソコン音楽クラブがリミックスワークショップをやってたんです。

観覧と参加があって、観覧で申し込もうとしたんですけど、申し込んだ時点で参加1枠しか残っていなくて。

「ワークショップだし初心者もいるでしょ!」って軽い気持ちでいざ会場に行ってみたら、

参加者がyuigotさんとか13歳でトラック作ってる子とか、もう凄い人しかいなくて。

参加条件が「DTM環境持参」だったから、当たり前かもしれないけど、やっぱり萎縮してしまって。

「た、ただの絵描きです…Remix作ったことないです…」って白目剥いてたんですね。

そんな時に隣の席で優しく教えてくださったのが、栄免さんで(笑)。

 


―そんな出会い方だったんですね。


I:ワークショップ中、一人ずつ前のスピーカーで現時点での進捗をかける時間があったんです。

栄免さんが開始30分くらいで発表したんですが、その時点でびっくりするくらい完成度が高くて。

その時に「いつかRemixをお願いできたらいいな」と思いました。

まさかこんなに早く実現するとは夢にも思いませんでしたが…。

 

 

自分たちの写真を載せるのはちょっと違うなって。

 

 

―ネムイちゃんっていますが、どういう存在なんですか。

 

nemuigirlのアートワークに度々登場する「ネムイちゃん」

 

I:盤を出すにあたってジャケットを描かなきゃなと思って。

それでジャケット案を考えていたんですけど、

その時に出てきたキャラクターが後に「ネムイちゃん」と呼ばれることになります。

 

―この時はまだ名前はなかったんですね。

 

I:無かったですね。何かキャラクターを据えたいな、くらいの気持ちで描きました。

ただ、後付けなんですが、

nemuigirlのアートワークにはすべて青い髪の女の子が出てくるんですよ。


A:それが実はネムイちゃんだった!ということになっています。

Twitterのプロフィールや一番最初のデジタルフライヤーにも登場していますね。

 

―それはいつくらいなんですか。


I:去年の7月末です。

nemuigirlという名義を名乗り始めたきっかけになった配信があって

そのときのフライヤーがこれです。

 

A:このとき私まだゲストだったんですよ!

 

―ネムイちゃんってVtuberっぽい雰囲気がするじゃないですか。
意識されてたりしますか。

 

I:全然してないですね・・・

 

―完全に趣味の絵なんですね。

 

I:そうですね。でも、3D化は考えていたのでそう見えるのかもしれません。

rainy secretのPVも「serial experiments lain」というアニメの映像を

グリッチかけてループさせたものなので

「キャラクター」の意識は最初からありました。

自分たちの写真を載せるのはちょっと違うなって。

 

 

 

―写真を出さなかったり名前を変えていたりと、匿名性は意識していますか

 

I:nemuigirl限らず普段から匿名性を意識はしています。性格的に・・・

 

A:なんとなくそれはわかるかも。

 

―最後に目標や今後のテーマを教えてください。

 

I:マルチネから出したいです!

 

A:活動を始めたときから私もそう思っていました!

 

―二人とも同じビジョンをもっているんですね。
nemuigirlの世界観的にこういうものをやっていきたい、というのはありますか。

 

I:ネムイちゃんに触れる展示を作りたいです。

 

―触れる?

 

I:VRコンテンツを作りたくて。

BHVR展っていう原宿のギャラリーで行われた展示があって、

VRChat上と現実の会場との両方で開催されてたんですけど、

坪倉輝明さんの「V/R Mirror」という作品があって。

ギャラリーの壁の一角が全面スクリーンとして映像が投影されていて、

カメラがあるので鏡みたいにこちらの姿がうつるんですよ。

VRChat上からも同じ場所に行くことができるので、

どっちからもお互いが見れるし、会話もできるんです。

 

―へえ、すごい!

 

I:それが凄く衝撃的で、「VR、勉強しなきゃ」と思って。

あとは、ビジュアルプログラミングを勉強しようと思っていますね。

VJに対して興味があるので。

音源に関してはブレイクコアをやりたい

 

A:やりたいやりたい!

他にもサンプルパッドが欲しいです。

www.soundhouse.co.jp

 

I:私もALESISのAIR FXが欲しいです!

灰野敬二が使っていたテルミンみたいなシンセです。

 

 

―欲しいものコーナーになっちゃいましたね。

 

I:そうですね(笑)。

こういう魔法みたいな、変な楽器が欲しいです。

 

 

 

 

 

nemuigirl公式Twitter:https://twitter.com/nemui_girls

nemuigirl 1stEP「NEON POP」公式HP:https://nemuigirl.wixsite.com/neonpop

 

 

(取材:斎藤俊介・片山哲

文・構成:EPOCALC)