2018年5月22日、
長くなった日が少しずつ落ちる夕暮れ
雑踏のセンター街をくぐり抜けた先、
渋谷チェルシーホテル にて
『くまロック vol.21』
「どうも、ペトリコールズです」
声と楽器が鳴った。スポットライトが眩しくて私は目を閉じた。くまロックvol.21の幕開けだ。
爽やかなギターのリフと男女ツインボーカルが特徴的な彼ら。足取り軽やかながらも強く、トップバッターとしてイベントを引っ張ってくれるような、そんな気がした。
なんといってもVo.Gt.のサカモトコウタの、オーディエンスを巻き込んで置いてかない声掛けが、絶妙に良い。気づけばみんな笑顔になってしまう。
MCから、それまでとは違った表情を魅せる曲『ターミナル』へ。キーボードの醸し出す独特の雰囲気と、リズムを裏拍で取るような横揺れ感。MVにもなっているこの曲は、映像作品としても私は好きだ。これからペトリコールズを聴く人の、きっかけのひとつになりそうだ。
最高の音で、イベントスタートだ。
ステージが始まった途端、会場の空気がその独特な世界感に包まれる。まるで夢の中にいるような感覚に。神秘的で幻想的、思わず惹き込まれてしまう美しさがGrace Cathedral Parkにはある。
それぞれの楽器から奏でられる音がお互いを引き立て合いながら混じり合う…そこにヴォーカルの透き通った歌声が入ることでずっと聴いていたくなるような心地良さが生まれている。ドラムレスバンドならではの良さが溢れる演奏だった。
醸し出される雰囲気、音の調和、メロディー、リズム、すべてがまとまって多くの人を魅了する、本当に素敵な空間が作られていた。
続いて登場したのは、本イベントでは唯一のスリーピースバンド、さよならさんかく。
特に印象的だったのは、ギターボーカルの透き通った可愛らしい声だ。
そこに、落ち着きながらもどこか情熱を感じるベース、ドラムが絶妙に重なって、心にじんわりと響いた。
バンド全体がゆるっとした雰囲気で、ライブを観ていても穏やかな気持ちになった。
音源ももちろん良いが、ライブでしか感じることのできない雰囲気がとても良い。
CDもリリースするなど精力的に活動中の彼ら。今後の活躍に注目だ。
都内で活動中の四人組バンド、montblancz。
ドリームポップやシューゲイザーに影響をうけた、幻想的で浮遊感があるサウンドが特徴だ。
癖のない空気に馴染んでいくような伸びのあるボーカルと確かな演奏力のあるバンドサウンドがとても印象的で、思わず目を瞑って空想にふけりたくなるような音楽だな、と感じた。
私はシューゲイザーは普段そこまで聞かず、正直いうと単調な曲が多いのではないかという偏見のようなものがあったが、montblanczは曲の構成がシンプルながらもしっかりしているからか飽きることなく聞くことができた。
曲の後半で照明が夜明けのように明るくなってギターが掻き鳴らされていくのをきいた時に、鳥肌がたった。開放感がたまらなく良くて、聞けてよかった!と感じた。
陶酔感のある音を浴びたいって時にぴったりなmontblancz、とってもおススメです。
初期のエレファントカシマシや竹原ピストルズを彷彿とさせるような力強いヴォーカルと陽気でキャッチーなメロディー。そして自然に体が踊りだすような雰囲気。
マイティマウンテンズだ。
彼らよりも前に演奏したバンドはどちらかというとエモい感じの曲が多かったこともあって、マイティマウンテンズのもつエネルギッシュさを今日は特に強く感じた。
音源にもなっている、『なっちゃう』のギターが鳴る。不思議と”踊りたくなっちゃう”雰囲気に会場が包まれ、そんな熱量に引き込まれるようにして、前へ前へ、と人が集まっていく。
いよいよイベントも終盤戦だ。
今回のくまロックのトリを務めてくれたのは、the Still。
どの曲もメロディーラインが美しく、男性ヴォーカルがキーボードを奏でる4ピースバンド。曲の持つ感情に引き込まれるような澄んだ歌声はどこか切なく、細い線のようにまっすぐ耳に届いた。
そして、そこに繊細さを持ち合わせたギターのサウンド、跳ねるようなベース、安心感のあるドラムが重なり、the Stillの音として会場を惹きつけていた。
また、当日販売していたEPは、ダウンロードコードにポストカードのような歌詞カードをセットにしているというこだわり。
Apple Musicでも聴くことができるので、ぜひチェックしてもらいたい作品です!
20回目という節目だった前回から約1年。
今の早稲田には、次々と新たな音楽が台頭し、その熱を高めている。
『くまロックvol.21』
ここに出演していたアーティストは、いつかの貴方にとって最高の音楽家になっているかもしれない。
彼らの”今”を、どうか見逃さないで、聴き逃さないでほしい。
美味しいお酒と空っぽになったタッパーを抱えた、帰り道の道玄坂で、私の体はどこかワクワクしていた。